COCの新年研修会が終わりました。小さい組織ながら全国から経営者が集まります。私なりに気も遣いますから、終わればホッとします。
石油産業と流通市場、自動車流通でこれから始まる激動、AI、IoTを主軸とした産業革命の到来、中小企業の働き方改革まで、専門の方々から見解を伺いました。COCでは講師に依頼する場合、タブー(忖度)一切なしでお願いしています。
あらためて実感したことは、石油業界が全く魅力のない世界になったことです。さすが社会主義の官僚が主導した元売再編だけあって、元売は「ガソリン配給公団」です。最終届け先SSを記した流通証明という「配給切符」なるものが21世紀に復活し、なければ「闇物資」として摘発=供給拒否の憂き目にあいます。
自由化の前後には、系列・非系列関係なく新しいSS収益モデルに対するトライ&エラーが見られましたが、行き着いた先は70年前の統制経済でした。お陰でガソリンマージンは安定したのですが、それが本当に幸せな世界なのでしょうか?という思いを強くしています。
まず、系列SSは間違いなく「FC契約」によって、コンビニと同様に本部―加盟店の関係が強まります。元売は各社、中長期経営計画を明らかにしています。将来予想を前提とした系列政策が始まります。
もともと特約店契約は、ブランドと商品を提供する対価として、系列拘束的な文言になっています。それ自体なんの問題もありません。ただ、コンビニと違ってきわめて杜撰に運用されてきただけのことです。だから、系列SSの業転買いが平気で許されてきました。
本来のFC契約関係が強まるでしょう。とくに社有物件に関しては要件が強まると思います。
また、契約には必ず更新があります。この更新にメリハリが出てくるはずです。プロ野球選手と同じく、更改、自由契約、任意引退…実力があればFA宣言できますが。
踏み絵となるのが、元売の計画に準拠した「中核業態」の運営力でしょう。立地・設備力を前提として、重厚なシステムを搭載したセルフSSです。系列販売は「垂直統合型流通」の度を強めるでしょう。
なんてことを書いていて、本当に馬鹿らしくなります。魅力のかけらも感じません。
以前からCOCの共通認識になってきたのが、ガソリンで小売りが変わるのではない、自動車で変わるということです。CASE、MaaSのキーワードで、世界が変わってきます。これは自動車「業界内」ではなく、全ての産業に巨大な波及効果を及ぼしています。
なにより、消費者が動かなければ絵に描いた餅です。経産省、トヨタ、JXTG、日経新聞が盛大に鐘太鼓を鳴らしても、FCV(燃料電池車)が高価な飾り物になっている事実を見れば分かります。
今起こっているCASEの変動は、主人公の存在が誰になるか分からないのです。自動車メーカーによる垂直統合支配はありえません。GAFAと呼ばれるIT巨人に取って代わる可能性すらあります。
こんな時代に、役所と大義名分を作ってガソリンというコモディティ商品で配給統制FCに進む業界ってなんでしょうか。この世界から革新的なイノベーションは生まれるのでしょうか。戦前からの呼称「給油所」への先祖返りです。
経営の独立性を持って次世代に向かうには、“脱給油所”です。ガソリンを売るなではなく、意識としての脱却です。コモディティの販売所である限り、市況という中小企業では自己制御できない世界に翻弄されます。元売ですら自己制御できない原油や石化市況に決算を大きく振り回されるのですから。
中小独立経営のご本尊はもはやガソリンではありません。CASE、MaaSから生まれる派生市場です。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局