7月の記事ですが、朝日新聞が「ガソリンスタンド、経営多角化に活路 高齢化、コロナ禍で需要減」と書いています。
「ガソリンスタンド(GS)業界が経営多角化を模索している。少子高齢化や新型コロナウイルスの流行で需要が落ち込む中、4月に消防法の規制が緩和され、敷地内で物品の展示販売などが可能になった。ただ、業界の大半を占める中小事業者は多角化しようにも資金力に乏しいのが実情…」
記事では、石連会長が「中長期的に見てガソリン需要がコロナ前を上回ることは考えにくい」、石連幹部が「需要減が一気に10年進んだ」、全石連幹部は「需要低迷が続けば、秋以降にGSの倒産が相次ぐ可能性もある」などなど悲観的な談話が続きます。
一方で、消防規制緩和を捉えて車販など経営多角化に取り組む動きが取り上げられていました。もはや、SSの業態革新は「構想」を語る時ではなく実践の時に来たと感じました。
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手元に半世紀前の某業界誌があります。全国の有力SS経営者が「1970年代のSS経営」を語っています。一部箇所を要約してご紹介します。
- 九州A社=SS油外アイテムは競合業態の台頭で半減するだろう。今後は、自動車の優れたコンサルタントとして整備の拡充が期待される。
- 九州B社=ワンストップショッピングニーズに対応して、①自動車関連(カーケアセンター、カーウォッシュ、レンタカー基地など)、②日常生活(利用頻度の高い携帯性の商品、スポーツ用品、コンビニエンなど)、③取次サービス(保険、住設、クリーニング取次など)、④レジャー(レストラン、喫茶店など)を立地に応じて考えている。
- 四国C社=割の良い商売はSSに何でもくっ付ければよい。連洗と貸しビルに喫茶店を併設してうまくやっている。いつまでも石油に恋々としている時代ではない。何で儲けるかが商売だ。
- 大阪D社=今後、洗車と整備収益は大いに上がる。そのため、従業員は「労働者」ではなく「技術を身に付けた人材」として投資を強化する…等々。
半世紀前の談話のごく一部です。共通した認識として、ガソリン依存から収益化の方向を模索し「セルフ到来」を見込んでいます。油外も整備や連洗の強化を考えています。市場競争が変質すると感じていたのでしょう。
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ひるがえって半世紀後の「SS多角化」ですが、この間に業態革新は進んだのでしょうか。
半世紀前の経営者が、従来型油外がカーショップなど競合に流出する状況を認識して整備強化を唱えています。しかし整備工場併設SSの登場は、90年代末の整備規制緩和を待つまで時間を要しました。連洗は談話の時代にブームがあったようですがその後廃れて、セルフ解禁で門型セルフ洗車が再登場しました。コンビニはモービル石油、レストランはエッソ石油が挑戦しましたが雨散霧消し、セルフでようやく登場です。しかも店内レジから監視するので、コンビニが運営主体です。「レンタカー基地」も半世紀前に登場しています。
つくづく思うのは、石油業界は本当に厳しくならないと腰を上げないことです。セルフ解禁も、エッソ石油は「1986年」と予想していたそうですが、10年ずれたことで金融危機と特石法撤廃が重なりました。朝日の記事を読むに、半世紀前の経営論を前にすると“この半世紀はなんだったのか”と暗然としてしまいます。
COCでカーケアセンターを繁盛店にした会社があります。それまでに20年間の悪戦苦闘があってのことです。多角化は資金と時間を要します。ビジネスモデルが出来上がった「FC加盟店」という選択が主流になるのでしょうか。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局