石連統計で都道府県ガソリン販売実績の9月分が公表されています。やはりというか、前年の消費増税前の駆け込み反動にコロナが拍車を掛けて、対前年同月比91.9%の大幅減です。統計の取り方は分かりませんが、宮崎、鳥取、鹿児島、和歌山、徳島は▲15%の大幅減です。
10月は増税の逆反動になるので統計上は回復するでしょう。ただし、省エネ車比率の増加にコロナ禍での新生活習慣で、構造的に給油客の増加に期待できないのが実情です。石油は市況商品ゆえに利益が変動するので、安定収益事業を取り込むのがSS共通のテーマです。
最近、油業報知新聞の各支局の記事を見ていると、車販に取り組むSSが増加しています。独自に事業転換するSS企業もあれば、元売や商社が主体となって展開するものあります。今後のSSアフターマーケットで広がりを持つことは間違いありません。
SS車販は21世紀のニュービジネスと考える人が少なくないようですが、実は古くて新しいテーマです。古手の経営者に聞くと昭和40年代に新車の販売も手掛けていたそうです。COC会員でもこの時代に創業して、セールスルームを展示場にしていたそうです。
本格化しなかったのは、やはり車検が規制されてSSで整備ができなかったことが大きいと思います。新車を売っても、メンテナンスはディーラーに行ってしまうわけです。
95年に道路運送車両法が改正されて、SS業界に初めはユーザー車検から、次に限定認証そして指定整備工場と車検整備の扉が開かれました。
この動きとほぼ時を同じくして、いくつもオークションダイレクト(AD)が現れました。時期的にIT化が急速に普及しており、ウェブを使って中古車オークション会場で入札するシステムも登場します。SSは無在庫で全国AA情報を駆使して顧客と商談できるようになりました。
車検整備の体制と情報システムは、SSが車販顧客を囲い込めるインフラとなりました。少なからぬSSがADに加盟しています。SS車販は中古車主体に動いてきました。
そして中古車の派生商品として、SSレンタカーが登場します。これも複数のFC本部が存在します。SSレンタカーも車販の1つです。高年式車や人気車種の場合、顧客が買い求めるケースが少なくありません。
そして中古車から始まった車販は、個人リースという新車販売に入っています。コスモ石油が元売の商品化しました。しかし、車販は“石油村”の話ではありません。とんでもない専業者が様々な商品を投入してガチの競争に入っています。
SSはガソリンという必需品を持つ強みがあります。カーアフターマーケット市場は、購買頻度の低い商品ばかりなので、定期来店のガソリンは非常に強い味方です。問題はその強みを本当に発揮できているかです。
給油来店から車検につなげて、買替ニーズに対応して新車リースや中古車を販売して、さらなるカーライフのサイクルの中で車を買ったSSに完全固定化する。という「構想」は私でも描けます。
先述した車検規制緩和の時代、「構想」はすでに存在していました。四半世紀を経て、本当にカーライフサイクルを囲い込んでいるSSは何カ所あるのでしょうか。
独立系のCOCには尊敬すべき事例があります。共通するのは、経営者が実戦経験豊富であること、失敗を重ねてきたこと、仮説と検証とさらなる実践を繰り返すこと。何よりも、車という高額品の商談で顧客接点の立つスタッフに報いる人事の仕組みを作っているかです。そして、経営者たちが“SS業界内の競争”ではなく、オートバックスやビッグモータースとの競争を意識していることです。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局