昨年8月、米国でセブンイレブンがマラソン石油傘下の販売会社スピードウェイの買収を発表して「コロナ禍で最大のM&A」と大きな話題となりました。
9800店舗と全米最大規模のセブンが、新たに3900店舗を受け入れて断トツの店舗シェアとなりました。2018年にスノコ社から1080店舗を買収しており、2年で5000店舗も増加させました。
米国のFTC(公取委)は、20世紀初めのスタンダードオイル解体の伝統から「集中」に対して非常に厳格に対応します。スノコ買収時にはセブン出店都市ごとに店舗数をカウントして、一割ほどを競争企業に売却を命じています。
今回もセブンはFTCのヒアリング、資料提供を行いながら一割の290店舗の売却を決定しています。同社はこれによりFTCと和解契約を締結したことで買収完了を公表しています。ところが一部、民主党の委員から「買収は違法」という意見が出て話がおかしくなっています。
日本の元売合併を見るに、FTCと公取委は似て非なるものがあります。スピードウェイの推定ガソリン販売量はENEOSをはるかに凌ぐ3200万㌔㍑でその一割を手放す計画は相当厳しいものがあります。それでも納得しないのですから。
セブンと言えば、過日のCOCリモート研修会でお話しいただいたジャーナリストは元セブングループの外食本部にいたそうです。POSデータと店頭情報から商品と顧客の動きを読む訓練と実践を徹底して叩き込まれたそうです。キッチンの什器備品の形態と配置、作業手順、作業動線などをミリ単位で仮説と実践と検証を繰り返す日々だったといいます。小さく考えて深掘りするのがセブンと説明していました。
この積み重ねから、21世紀前後から「セブンプレミアム」というPB商品群を立ち上げてきました。現在、売上げの3割強を占めています。PB商品とはセブン独自開発商品です。同社が商品をデザインして関係するメーカーや原料会社がチームとなって開発します。カップ麺やビールなど日清やキリンなどナショナルブランドが強力な分野にも食い込みました。
何度か書きましたが、2008年にCOC有志で米国サンディエゴに赴いた時、セブンブランドの統一したSS・コンビニを見つけました。それまでは石油会社ブランドを並立していました。しかし米国との対立からベネズエラ系製油所から供給を止められて、セブンが独自調達して店舗もPB化していました。
店舗は食文化の違いを別にすれば、日本の最新店舗と同一でした。店長はゴンドラと商品を自慢げに案内してくれました。「本部はディストリビューターからガソリン調達している」と言った時に、セブンブランドのローリーが入ってきました。
あれから13年、米国でのセブンプレミアムとガソリンに自信を持っての、最近のM&Aなのでしょう。
先のジャーナリストはセブン仕込みなのかSSを見る時も、売上げや数量よりも顧客と接点に関心を持っています。ガソリンも油外商品はどこでも買えるコモディティで価格や景品の差別化ばやりで、かつ市場成熟により縮小均衡のスパイラルにあるといいます。
元売のお仕着せではなく、経営者独自の哲学に従って、「石油村発想」でない顧客との関わり方を実践するSSが出現しているといいます。ナショナルブランドの元売ではなく、SS企業オリジナルの「プレミアム」です。いろいろ面白いケーススタディを紹介いただきました。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局