COCと独立経営<770> 石油石化の再編と公設民営 – 関 匤

経産省が「第6次エネルギー基本計画(案)」に対するパブリックコメントを募集していました(受付は終了)。ざっくり石油に関する部分を読むと、このような表記があります。石油精製・石化コンビナートの国際競争力を懸念している部分です。

「「資本の壁」や「地理的な壁」を超えた統合運営・事業再編を通じ、燃料と石油化学製品等の柔軟な生産体制の構築等による高付加価値化や設備の共有化・廃棄等による設備最適化や製造原価の抑制を進め…」(傍線筆者)

次なる元売再編ありますね。

コンビナートは運営を1本化した方がはるかに効率的です。再編となれば、主導権は石油化学になるでしょう。高度な熱分解能力と原料品の化合ノウハウが蓄積されています。現実に住友化学はサウジで新鋭の大型コンビナートで石油精製をやっています。

また、元売の化学部門は石油と同じくコモディティの原料品主体ですが、石化はオンリーワンの利益商品群を持っています。先の住友化学は21年度第1四半期で、コモディティの石油化学は199億円の営業損失ですが、情報電子、医薬品、健康農業などの利益により最終199億円の黒字です。商品力で稼ぐ力を持っています。「合成燃料」を考えても、石化のノウハウが不可欠となるでしょう。

しかも国際市場で戦ってきた歴史を持ちます。私の知人は某石化会社の営業マンです。担当が記憶媒体の部材で、付加価値は高いけれど単価が小さいために3人で世界を担当しているそうです。彼は環太平洋地域担当で、日曜夜便でシンガポールに飛んでそこを拠点に営業に飛び回り、土曜の朝に帰国する生活です。

基本計画が国際競争力を懸念しているわけですから、コンビナート統合では石化が主役となるでしょう。

基本計画(案)にはSS拠点確保として、こういう表記があります。

「民間事業者単独によるSSの事業存続が困難なケースにおいては、まずは、民間事業者同士の「協業化」、「経営統合」、「集約化」を進めることが重要であるが、(民間事業者では維持が困難な場合)自治体によるSSの承継や新設による「公設民営」の形で地域内の石油供給体制を確保することが適切である。」(傍線部同)

「公設民営」という表現が明記されています。自治体など官公庁がSS施設を設置、保有して、SS事業者が運営に当たるという意味です。現実に過疎地に営業再開されたSSのほとんどが公設民営化されています。

基本計画に文言が明記されたことで予算がついて補助金が下りてきます。どれくらいの公設民営SS数が必要なのでしょうか。そもそも「公設民営」の前提条件はどのようなものになるのでしょうか。言葉が拡大解釈されて、公設民営が乱発されることはないのでしょうか。そもそも半官半民とはイコール非効率の象徴ですから。

以前から疑問に思っているのですが、SS過疎地というとなぜ「市町村別SS数」で考えるのでしょうか。SSに市町村の線引きは無意味です。SSは自動車利用者の店舗であり、自動車の行動圏は市町村域に限定されないからです。

私は10㌔㍍ほど先の高速ICにアクセスする時、県をまたいで3つの市を通過します。車は簡単に市町村界を突破します。半径10㌔㍍以内にSSがあれば、補助金を投入する必要はないでしょう。

やるなら規制緩和して、地域限定でも米国YOSHIのようなガソリンデリバリーサービスを認めたらどうでしょうか。YOSHIは新型コロナの巣ごもりで急成長しており、GM(ゼネラルモーターズ)が20数億円も投資する程です。

SS過疎地になるような地域なら給油場所に困らないでしょう。併せてメンテナンスサービスも行えば、日本でもビジネスとして成立する可能性があります。補助金ありきのSS業界ではなく、新規事業を後押しするような考え方は出てこないのでしょうか。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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