10月28日付日本経済新聞に「バイオマス活用に暗雲再生エネ認定、欧米で対象外も」という記事がありました。
「バイオマス発電は間伐材といった木や、燃やせるゴミ、食料廃棄物など、生物由来の燃料を利用する…燃やした際にCO2が出るが…植物が光合成で吸収するCO2と相殺したとみなし、再生エネに位置づけられている。」(記事)
しかし、欧米の一部から、①米国では間伐材ではなく生木を伐採、②燃焼しやすく加工する時に温室効果ガスを発生、③伐採で森林破壊が進む、といった懐疑論が出ているとか。
私は知見の低い人間だけに、最近の「エネルギー論」ですんなりと腑に落ちる話がありません。私程度の人間が理解できるように、咀嚼(そしゃく)して伝える能力のある「専門家」はいないのでしょうか。
エネルギーの議論でもっともキモになるのはEVとか水素ではなく、「一次エネルギー」をどうするかのはずです。原動力をどうするかです。日本は一次エネルギーのほぼ全量を輸入に依存しています。その状況で「脱炭素」という、先進国で一番高いハードルを掲げてしまいました。
それでも有力な一次エネルギーがあります。一つは水力、もう一つがバイオマスです。これって立派な一次エネルギーです。高コストで水素を作るよりも、目の前に豊富で良質の水源があり、国土の七割を占める森林があります。
残念ながら水力は「脱ダム宣言」のポピュリズムに遮られています。となれば間伐材ですが、日経記事によると、国産材がバイオマス燃料として割高で輸入せざるをえないらしいのです。しかし、間伐だけも意味があります。間伐で森林の空間を広げるだけで、CO2の吸収力は飛躍的に高まります。だから、整備された山林では杉や檜の巨木が育ちます。しかも、根が深く張ることで治水など災害抑止力も高まります。戦前は水力、森林が動力であり燃料の役割を担っていました。水や森林ですから「カーボンニュートラル」です。
こんな立派な一次エネルギーがあるのに、欧州の”狂気”(あえて言います)に煽られて二次エネルギーの水素だ、アンモニアだという「正論」がまかり通っています。私が無能なのでしょうが、腑に落ちないのです。
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出光興産が太陽光パネル生産中止を発表しました。ニュースリリースで太陽光発電の今後の課題として次のように述べています。
「メガソーラー建設に適した用地はほぼ利用されており、近年は建設による森林伐採や土砂災害など地域社会の環境や景観への影響が社会問題になっています。」
「太陽電池パネルも製品としての寿命を迎えると産業廃棄物となり、大量廃棄が社会問題となります…最終的に埋め立て処理されるゴミの量を減らすマテリアルリサイクルの仕組みが求められています。」
「昼間にしか発電せずしかも天候に左右される太陽光発電を、系統電力システムと共存させ安定電源として活用できる仕組みが求められています。」
再生エネルギーに対するアンチテーゼのような文言ですが、このリリースはごくごく私の腑に落ちます。
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私が考える「エネルギーの原理原則」は、①カロリー、②余剰(安定供給)、③価格、④流通容易性、⑤環境影響度のベストミックスです。炭化水素は再生エネに対して圧倒的な優位性があります。それが駄目なら、水と森林の一次エネルギーを有効活用すべきです。
炭化水素に関しても、経産省「エネルギー白書2020」で、GDP1兆円当りのエネルギー消費は1973年比で半減しています。2010年以降は減少し続けています。ガソリンは2005年度比30%需要減ですからそれだけCO2を減らせています。
欧州の狂気と距離を置いた日本の地勢と社会環境に立脚した我が道で、自然資源と炭化水素を賢く使う脱炭素論は「天下の暴論」なのでしょうか。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局