4月12日の油業報知HELLOに、宇佐美鉱油によるヒラオカ石油のグループ化が大きく報じられていました。宇佐美鉱油は2017年の三和エナジー買収に始まって、いわゆるパトロール給油(パト給)など燃料配送企業のグループ化を進めてきました。5年間で3社をグループ化して400億円規模の新規収益事業を立ち上げました。
フリートSSの給油事業は、宇佐美鉱油といえども需要成熟の影響を被っているはずです。国交省は脱ブラック労働のホワイト物流を推進しており、無人走行も物流業界からと考えられています。燃費の改善などフリート給油の先行きは明るくありません。
一方、燃料油配送は堅調であり収益性も高い分野です。パト給はLPGの保安管理のように24時間出動態勢が必要です。また現場での潤滑油供給や軽メンテナンスなどセールスドライバー育成も重要な課題です。フリートSS企業にとって死角であったと思われるビジネス領域ですが、M&Aで短期間に事業ポートフォリオを構築したことになります。
歴史的に見てフリート業者は、元売ブランドを掲示していても一般特約店ほど系列の縛りが強くありません(最近の実情は分かりませんが)。
ガソリンではなく軽油に傾斜した経営構造が大きな意味を持ちます。中間品は一般特約店でパト給を行うケースでも、仕入れなど自由度が高い世界です。
また、規制を受けることもありませんでした。私がよく書く第一次石油危機以降の規制強化時代も、それはガソリン規制であって軽油規制はありませんでした。だから廃止代替建設指導で、新設は他SSの廃止が条件とされていた時代にも、フリートSSは新設されていました。軽油ステーションだからです。
80年代に新設フリートSSへ試し買いに行ったら、スタッフがガソリン計量機に誘導してくれました。軽油SSで消防許可を取って、ちゃっかりガソリンを売っていました(閑話休題)。
茶化すのではなく、SS市場にあってフリート業態が数少ない成長業態であることです。バブル崩壊後に公共事業の激減と企業の物流効率化によって、軽油需要は半分近くまで激減しました。大手フリートの再編もあったわけですが、2010年頃から需要は微増微減と横這いで下降一途のガソリンと好対照です。
そしてSSに限定されるガソリンと違って、軽油は用途も含めて多様性を持っています。
別に宇佐美様万々歳を唱えるつもりはありません。前回も書きましたが、一般SSがガソリンに傾斜しすぎた結果、成長業態が見えてこないということです。「協調」という言葉はあっても「成長」が口の端にのぼらないのです。おかしくないでしょうか?
働く従業員の中には、仕事を覚えて前向きに働く人が少なくありません。その時、企業成長の実感が大きなモチベーションになります。成長すれば若くして店長になれる、統括になれる、部長に役員に…と将来が見えてきます。
ガソリンというコモディティの比重が重しとなって成長戦略が描き切れないのが実情と思います。そして前回書いたように、ハードの発展形も見られません。現状のハードでは物理的に事業が制約されてしまいます。数少ない高収益の繁盛SSを見ると、制約の中で本当に涙ぐましい人的努力をされています。
45年前、全国石油協会の1977年度SS経営実態報告によると、SS企業の平均年商は9億7000万円でした。70%が従業員50人以下の企業でした。100億円超の特約店がゴロゴロいたでしょう。この頃に1号店をオープンしたセブンイレブンの初年度年商は9億円でした。
同時期に同規模だったのですが、後者は今や8兆7000億円の国際企業です。優秀な日本人がSS経営しながら、残念なことです。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局