300万BD前後で推移していた米国の原油輸出が、4月15日までの週平均で約430万BDまで上がりました。そして製品を含めた輸出量は1600万BDとなりましたが、この数字は同国の石油輸出量として過去最大です。
一方、原油生産はウクライナ戦争が始まって以降も増産の動きが無く、4月に入って10-20万BDほど増えているだけです。4月15日までの週平均は1180万BDですが、コロナ以前の1300万BDには遠いレベルです。
バイデン大統領の公約でもある「石油・ガス生産に対する規制は気候変動対策に必要」という政策が足かせになっています。連邦所有地での石油・ガス採掘権の賦与を停止・制限し、米国とカナダを結ぶキーストーン・パイプラインの建設を中止しています。
原油産出州のノースダコタ州始め25州の共和党知事が猛反発しています。大統領に突きつけた書簡でこう述べています。
「バイデン大統領の見当違いの政策は、米国民を危険にさらし、アメリカを停滞させている。大統領は反石油政策を撤回し、米国のエネルギー生産能力を解き放って消費者を守り、ロシアのような敵対国から輸入するのではなく、友人や同盟国にエネルギーを販売できる状態に我が国を戻す必要がある。」
米国が輸入する原油・製品の8%がロシアから来ています。67万BDですから、「米国の生産量をコロナ前に戻せば不要ではないか」ということです。
私は知事さんたちに同感です。
2050年の理想は結構ですが、現在の世界は事実上の戦時体制下にあります。ロシア経済制裁をやっているわけです。「石油ガス一本足打法」のロシア産業にダメージを与えるなら、知事さんたちに正論があります。
戦時下では徹底的なリアリズムが求められるはずです。脱炭素と人名を秤にかければ、ウクライナでこれ以上死者を増やさないためには革命が起こるまでロシア経済を追い込む必要があります。
ひるがえって日本ですが、補助金で値上げを抑えるという発想は根底に「誰も反対しない」「どうせ人のカネ(税金)」というさもしさが見えてしまいます。
本気のリアリズムでエネルギー高騰と供給不安を断ちきるなら、「原発再稼働」しかありません。日本の一次エネルギー構成比で原発は2010年に11%強ありましたが、直近では2%です(日本エネルギー経済研究所2021年10月)。
ロシアからの原油輸入依存は3.5%、LNGは8%です。合わせれば2010年の原発構成比とほぼ同じです。ロシア以外のLNG調達を少し増やせば、エネルギーの対露依存をゼロに出来ます。
環境原理主義者・グレタ・トゥーンベリさんを擁する環境先進国のスウェーデンですが、一次エネルギーに占める原発は34%もあります(グラフ参照)。Yahooニュースにグレタさんのウクライナ戦争に対するツイートが掲載されています。
「ヨーロッパは(天然ガスや石油等の)化石燃料のために6億ユー
ロ(約790億円)以上を、毎日、プーチンに支払っているのです…このお金は人命を犠牲にしています。ウクライナの人々に対する戦争の資金源になっているのです。平和のための禁輸措置を強く求めます」
ならばグレタさんの過激な環境発言に共感した日本のマスコミや有識者の皆さんは、原発再稼働して「プーチンに軍資金を支払わないこと」に賛同すべきと考えます。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局