COCと独立経営<804>石炭火力と原発再稼働で欧州支援 – 関 匤

日本経済新聞7月20日の記事です。

「欧州連合(EU)の欧州委員会は20日、ロシアからの天然ガス供給の途絶や大幅減少に備えた緊急計画案を公表した。減少分を補うため他地域からの調達や再生可能エネルギーの導入を強化するが、それだけでは足りず、加盟国に15%の消費削減を要請するなど需要減にも取り組む。需要期の冬を前に欧州の危機感が高まっている」

「15%の消費減」は大きいですね。1973年の第一次石油危機時に、欧州は厳しい消費節減策を行いましたが、74年、75年の欧州石油需要は前年比▲5%でした。調べて驚いたのですが、この時点で英国の需要がピークアウトしていました。それを含んでの▲5%でした。

ガスに関しては微増減にあり、やはり15%は大きなハードルです。(BP統計)

ウクライナ戦争の膠着で石油と天然ガス供給に不安が広がる中、日本で非常に明るいニュースが出ました。

7月14日、東京電力と中部電力が出資する発電会社JERAが建設していた、武豊火力発電所(愛知県武豊町)の5号機が完成しました。8月5日から営業運転を開始するというものです。

石炭に17%のバイオマスを混ぜて燃やす発電方式を取り入れており、全量石炭火力に比べて、年間で90万tの二酸化炭素を削減するそうです。出力が107万kWで原発1基分に相当します。

資源エネ庁「エネルギー図面集」によると、100万kWの発電所を1年間動かすために必要な石油は155万tとあります。容量換算すると190万です。

武豊火力の燃料は石炭です。ロシアや中東依存度が高い石油・ガスに対して、電力用一般炭はロシアが1割ありますが8割強が豪州とインドネシアという「安全地帯」からの輸入です。武豊火力1基で200万相当の石油・ガス輸入を減少させることができます。

石炭火力というだけで眉をひそめる人がいます。しかし、「日本のベストプラクティス(最高水準性能)を排出の多い米国、中国、インドに適用した場合には、日本のCO2総排出量より多い約12億tの削減効果があると試算されています」(JパワーHP)と日本は世界トップの発電効率を誇ります。日本の燃焼技術は、安い石炭を焚きながら世界をクリーンにする実力を持っています。

そして原発を再稼働すれば…。現在完全停止中の原発の総出力は9473万kW(発電情報公開システム)であり、全て再稼働すると石油換算で年間1800万に相当します。先の武豊と合わせれば2000万となり単純に日本の石油需要を1割以上削減できます。この数字は欧州ならオーストリアの年間消費量をはるかに超えます。

日本は石油やガス火力分が減少して「脱炭素」も実現できます。と、こんな話を書いていると2年前なら“非国民”のレッテルを貼られたでしょう。しかし、今は「戦時」です。中国改革開放を指揮した鄧小平じゃないですが“白でも黒でもネズミを捕るのが良いネコ”の緊急時です。

しかも日本の石油・ガス消費が減少すれば、余剰を欧州に回してエネルギー危機を緩和することができます。ウクライナ戦争で日本が重要な後方支援を担えるのです。

そんな時に朝日新聞は「石炭は問題」と武豊発電所に批判的です。そして記事の締めくくりは「太陽光など再生可能エネルギー」と、最近流行の表現でいえば“オツムがお花畑”です。

資源を持たざる国ならば、世界のCO2を大きく削減する日本の石炭燃焼技術をもっと磨きあげるために支援するのがメディアの良心ではないでしょうか。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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