ウサギの年が明けました。本年初めての拙稿を書かせていただきます。
年末に興味深い書籍とレポートを入手しました。
書籍のほうは、迂闊にも出版されていたことに気づかず2年遅れで購入しました。ダニエル・ヤーギン「新しい世界の資源地図」(東洋経済)です。
ヤーギンは1991年に「石油の世紀」でピュリッツァー賞を取りました。当時、タイトルに惹かれて購入しましたが、人物と様々なエピソードが描かれた面白さに引きこまれました。詐欺師が大油田を掘り出した話には笑いました。
そして、30年前の時点で「石油の世紀が黄昏時にある」ことを暗示していました。
さて、冒頭の近著は昨年1月に翻訳刊行されています。つまり、ロシアのウクライナ侵攻前、おそらく21年秋頃の時点で書かれた世界のエネルギー情勢です。パイプラインをめぐるウクライナとEU諸国との軋轢を詳細に解説しながら、こう述べています。
「20年以上、ウラジーミル・プーチンは大統領として壮大な『国際的事業』に取り組んできた。それは旧ソ連諸国をまたロシアの支配下に置くことであり、ロシアを世界の超大国として復活させることであり、(中国サウジ等との)新しい同盟関係を築くことであり、ひいては米国を押し返すことだった」
文脈からロシアが新たなウクライナ攻勢に出る可能性を強く示唆しています。
また、第一章で米国のシェール開発の歴史が描かれています。20世紀初頭、字の読めない貧しいギリシャ移民の息子が苦学して大学を卒業し、第2次大戦後にドラッグストアの2階で地質コンサルタントを開業したのが始まりです。1981年に可能性を信じて事業を開始して結果が出たのが1998年です。もの凄い執念です。
会社を潰す寸前でしたが、掘削成功で2002年に大手に企業を売却しています。
現在のエネルギー産業の立ち位置が米国、ロシア、中東、中国の視点から描かれており、面白く読みながら勉強になる一冊です。
さて、もう1つは「レポート」です。
これは別の意味で(第三者にとっては)面白い読み物です。これを基に経済物の作家が必ず小説を刊行するでしょう。「企業スキャンダル物」です。
昨年エネルギー業界では、大手ガス・電力など上場総合企業T社で社長に関わる「不適切な経費処理問題」が発覚しました。
これに関して、昨年12月14日、T社の特別調査委員会が報告書を公開しています。同社HPから入手できます。
社長は、資源エネ庁石油部流通課長としてSS業界に関わり中小企業庁長官を経てT社に転じた元経産官僚です。ガス産業の成熟化から事業領域を家庭、通信領域に広げる戦略が功を奏して業績は好調であり、経営者としては有能な方です。
問題になったのはお金に関する不正です。
社長報酬は2億円強ですが、これはグループ77人の役員報酬の45%を占めています。それは別にしても、特別調査委員会は経費の不正流用を洗い出しています。
会社資産として購入した信州のリゾートマンション、高級マンション、クルーザー、社用車3台を個人的に利用して、維持費も会社が負担しているというものです。「その必要性や利用状況の適切性に疑義がある」と委員会は述べています。
そして「非常に多くの会食を行っており、その内容の適切性に疑義がある」とします。家族や個人的趣味、役員の名前を使った経費精算などが少なからず出現しています。
「リゾートでコンパニオンとの混浴」を繰り返したことが、経済マスコミでシンボリックに扱われることになっています。着衣であり接待であったという反論も行われています。
問題は、上場企業においてコンプライアンスや社内規定の適用が適切に行われていたのかにあります。こういう話は往々にして氷山の一角であり、日本市場に対する投資家の疑義を生みかねません。サラリーマン経営者にとって経費は「どうせ人の金」なのでしょうか。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局