資源エネルギー庁の石油精製流通研究会で、全石連から「仕切り価格への政府関与」の要請が出たと新聞報道にありました。どこまで本気で言っているのか知りませんが、こんな話が出るようでは末期症状です。
実は、昭和50年代後半に規制を牛耳っていた資源エネ庁が「政府関与」を考えたことがあります。霞が関は自分に都合のよい事例をつまみ食いするのが得意技ですが、この時は“おフランスかぶれ”の誰かさんが「シーリングプライス制度」導入をほのめかしました。増大するハイパーの勢いを止めるために行った、仏政府価格規制の焼き直しです。
仏政府は、民族系保護、SS出店規制、SS設置距離規制を行っており、資源エネ庁は都合よく政策を日本にトレースしていたようです。さらに仏政府は系列保護とハイパーの台頭を抑えるべく、シーリングならぬ「ボトム(下限)価格規制」を実施しました。しかし欧州全域から輸入するハイパーが下限を下回り、規制は崩壊します。
そこで資源エネ庁が、下限が駄目なら上限でと逆張りしたのでは、と勘繰っています。シーリング=天井価格を設定することで、ガソリン売価を天井(高値)付近に誘導して市況問題を解消しようと考えたのでしょう。当然、価格誘導の旗振り役は全石連になるわけです。
当時の公正取引委員会は機能しており制度としては実現していません。しかし、各地の石商で「155円運動」が展開されました。某専門紙は人気TV番組のキャッチをもじってみんなで広げよう155の輪と大見出しを打ちました。実際に各地に155円横並び看板が続出しました。一方、無印SSは天井をくぐることで容易に拡販できました。
そこで無印の供給源遮断作戦が展開されます。卸元への圧力など業転の供給妨害が激化しました。その結果、2つの事件が起こります。1つは、高値で減販したことにより、規制されていた日曜休業を堂々と破るSSの増大でした。無印だけでなく系列SSの方が多かったほどです。もう1つは、無印SSが結束して製品輸入の動きが出たことです。大蔵省が介入して輸入業者(神奈川県)の銀行融資を止めるという前代未聞の事件となりました。これが国際的に非難され、自由化への端緒の1つとなりました。神の見えざる手という言葉がありますが、価格に介入するとこういう「事件」が発生します。
間接的であれ、資源エネ庁はおフランスの二番煎じで同じ過ち(さらなる市場混乱)を犯しています。21世紀にもう一発やるつもりでしょうか。
それよりも、日本の石油産業です。日本企業は中小企業に至るまで、欧米と同じ条件を与えられながら様々な新製品やビジネスモデルを開発して差別化しています。
一方、石油産業は、製品輸入自由化、セルフ解禁、ハイパー登場とおれによる市場変動という欧米と同じ与件を与えられています。しかし自由化から20年たって、ガソリン市況論しか出てきません。あげくに「配給統制待望論」とは…。変動を生き抜くSS利益業態作り=業態転換こそ最優先課題のはずです。
これは役所の政策でなく、経営者個々の才覚によって実現するものです。その萌芽は系列・非系列問わず、しかも中小店に見られます。規制や業界秩序に埋もれてきた「優秀な経営マインドの復活」こそ声を大に語るべきです。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局