COCと独立経営<853> BM社問題で「すぐそこにある危機」 – 関 匤

ビッグモーター(BM)の事件ですが、次から次へと問題が炙り出されてきますね。
同族オーナー経営で相当にノルマと「圧」の強い会社だった事実が明らかになっています。しかも、大企業並みの売り上げ規模ながら広報機能は無かったようで、問題が報道されてからも暫くは対外説明を一切行っていません。

私が前々回から、ビッグモーターの事件はSS業界にとって対岸の火事ではないと書きました。同じことをあえて書きますが、同族オーナーの企業体質が多くの石油販売業者に似ているからです。

BM社長の記者会見を見ていて笑えませんでした。もし、SSで整備や修理で不正が発覚したら、企業はどう対応するのでしょうか。SS経営者が同じ立場に置かれたら同じことを言うかもしれません。「現場が勝手にやった」と。(もちろんそうでない方もいますが)
出来上がった会社ほど経営者は現場の実態を知らない、あるいは知らされていないことが多々あります。昭和のフルサービス時代に意図的にクレームを付けてくる方々がいらっしゃいました。その場合、大手店ほど中間管理職で対処という「誠意」を見せることで、問題を上げないことがありました。一般的にですが、同族オーナーは“裸の王様”になりがちです。
BM社もそういう状態だったと想像できます。

今回の問題には、国交省、金融監督庁、消費者庁が対応に絡んできます。
国交省マターとしては、整備現場の不透明性が挙げられます。自販店でもSSでも、作業現場をお客が確認できるケースはまれです。消費者にとって「ブラックボックス」になっています。この非対称性にメスが入る可能性があります。
例えば、作業待ちの顧客がスマホで、作業状況を動画でリアルに確認できる仕組みを求められるかもしれません。制度ができなくとも、有力業者が独自に仕組みを作ってそれを「信頼の証」とアピールして集客することも考えられます。

かつて不動産賃貸はきわめて不透明な世界で、“駅から十分”が“駅からじゅうぶん歩く”という常識が通用していました。しかしセンチュリー21が登場してから、明朗さをうたう業者がしのぎを削るようになって、かなり明朗な世界になりました。
整備の世界は賃貸不動産と同じ道を歩むのではないかと思います。

そして、成り行き次第でかなりヤバイ問題は「保険代理店制度」の歪みが俎上に載ってしまったことです。
自動車販売会社は本来、商品力とアフターサービスで、利用顧客に満足・信頼を提供することを事業目的としています。
一方、今回明らかになったように、整備・修理部門では交換部品点数や、よりグレードの高いものに交換することで収益を拡大できます。
損保で処理できるので顧客を説得できます。でも、保険を使えば顧客の等級が下がるので、顧客満足に反することになります。

事業者が代理店になることで、顧客の利益を阻害する行為が利益を生むという「利益相反」を動機づけることになりはしないかという疑惑が持ち上がります。
国交省や金融庁のBM社への判断次第では、SS事業にさらなる固定費増加をもたらしかねないのです。ガソリン市況協調や合成燃料などの問題もありますが、今そこにある危機をまずは真摯に考えるべきでしょう。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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