COCの秋季研修会が終了しました。人数は40人余りですが、北海道から九州まで遠隔地から社長さん方がご来訪いただきました。私のような人間でも少しは気遣いしています。
3人の講師にお話しいただきましたが、中長期的に見たモーダルシフトの可能性とサービスステーション経営の考え方と選択肢、元売会社の経営状況と将来戦略、SS経営者が何を考えているか等々、結果的に話が「一気通貫」となり、手前味噌ながら有意義な研修会となりました。
一気通貫とは、ポンプであろうと充電器であろうとコモディティにすぎないので、経営者の責務はそこにどういうビジネスを重ね合わせるかにあるということです。
コンビニやランドリー、カーシェア・リースといった手あかの付いた、すでにレッドオーシャン化している既存ビジネスを組み合わせる考え方とは一線を画します。
研修会で経営者の事例を解説してくれる講師がいます。1SS店であっても独自の飲食を開発している人が少ないので驚いています。
また、整備と車販を進化させてカスタムカーにリビルトする方もいます。
女優の伊藤かずえさんが1990年のシーマを乗り続けていますが、喜んだ日産自動車がプロジェクトで彼女のクルマをカスタマイズしています。自動車流通業者に聞くと、最近、80年代の国産車の引き合いが多く、“こんなクルマに?”と驚くほどの高値で取引されています。買った人がカスタマイズしています。
1SS店でも技術力とセンス次第で「当店だけの商品」を創造できます。研修会後の懇親会はこういう話で盛り上がりました。
最近、欧州市場を調査してきた桃山学院大学・小嶌正稔教授が「5年後のSS業界、15年後のSS業界」のタイトルでお話ししました。副題は「日本のSS業界が独自に発展してきたことは、次世代の選択肢を増やすのか?」でした。
「独自に発展」に関して、小嶌教授は「欧米の先進事例が日本では役に立たない」と述べられました。私が勝手に解釈するならば、持論でもある「石油危機と失われた四半世紀」が大きいと考えます。
欧米は石油危機前後から石油会社が戦略的にセルフ+コンビニ業態を展開して、90年代から流通系が力を付けて、様々な複合業態を展開し、バッキーズのように飲食レベルの高さとキャラクター商品の品ぞろえでとてつもない集客をするチェーンに発展しています。
日本は規制とガソリンで食えた時代が続いた結果、昭和時代のSSが数多く残り自由化後に多数淘汰され、地下タンク問題に抵触しました。(一方、今は無き米国のSS専門誌NPN社は80年代から「地下タンク問題」を特集していましたが…)
要は欧米ではコンビニ併設の発展業態が利益軸となり、仮にEVが全盛となっても給電客と店舗利用客は残ります。だから店舗のイートインや商品開発の競争となり、米国コンビニ情報サイトによると、新規出店やM&Aで拡大する勢力の一方で、商品・システム開発力の弱いチェーンが企業や店舗の売却を凄い勢いで行っています。
ところで小嶌教授はEVに関して、英国が「日本の5年後の姿」という仮説を述べました。英国の新車販売でEVが3%となったのが2019年です。20年は一気に10%です。
日本は今年から来年にかけて3%台に乗るでしょう。この数字は2005年頃のハイブリッド比率に近いものです。エコカー減税のような補助政策が強化された場合、2012年頃のHV比率になるのかなと思います。
ちょっと安心したのは、EVが販売の88%を占めるノルウェーでも、保有台数に対する比率は20%だそうです。英国は3%です。日本のそれはもっと長いスパンで考えられます。だからこそ「5年後」「15年後」のタイトルであり、それまでに何か独自に事業軸を作ってくださいというメッセージでした。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局