大々的にニュースになっているので、この話題について書きます。
「石油元売り最大手のENEOSホールディングスは、齊藤猛社長が懇親会の場で同席していた女性に酒に酔って抱きつくという不適切な行為があったとして解任したと発表…内部通報の窓口に、齊藤社長が懇親会の席で、酒に酔った状態で女性に抱きつくという不適切な行為があったと連絡があり、調査を行った結果、事実だと認められたということです」(NHKニュース)
昨年には、会長が同じく酒に酔って女性に不適切な行為を行ったという事件があったばかりです。2年続きのトラブルとあって、今回の事件の記者会見動画を見たら、「ENEOSブランドは地に墜ちたのでは?」という厳しい質問が飛びました。
大企業の社長となるとステークホルダーがあまたいますから、社内の事後対応は大変な状態と想像されます。
ただ、今回の事件対応は前年に比べて速やかでした。週刊誌のスクープを知って事前に対応したのかと思いましたが、11日の新聞広告で週刊文春も新潮もENEOS社長の件を掲載していません。引用したNHK報道にあるように「社内通報」に迅速に独自対応したのでしょう。
逆に会長の事件の際は、決算記者発表に「一身上の都合で退任」というペーパーを紛れ込ませた感がありました。その後も緘口令が出たのか会長退任の理由が一切説明されず、また報道に対しても強力にガードしたようです。
ところが2カ月後に週刊新潮が大きく報じたために、企業イメージを大きく損なうことになりました。そういう意味で今回の同社のリスク管理は効いています。さらに記者発表の翌朝には当事者の社長が自宅前でテレビカメラに顔を晒して陳謝しました。
とは言え、相次ぐトップによる酒と女性絡みの事件であり、組織内に昭和のセクハラ、パワハラ体質が維持されているという誹りは免れないでしょう。
数年前に書いたことがありますが、エッソ石油で広報部長をやっていた多田正遠さんが「実戦広報あ・ら・かると」(幸書房)を刊行しています。1989年にビジネス本として書店で販売されました。
覚えているのは、1988年にアラスカでタンカー事故を起こして原油を大量流出させたエクソン(当時)と、別の石油会社の対比でした。
エクソンは初期対応が遅れて、しかも天候不良が重なったために、本社スタッフが現地に到着した時にはマスコミが集まっていました。ラッコの死体が浮遊するさまがテレビで放送されて、全米から大バッシングを受けました。経営の屋台骨を揺るがすほどの大ダメージを被っています。
もう1つの石油会社の事例は製油所の爆発事故です。周辺の住宅地まで破片が飛散して、家や車を傷付けました。この会社は事故の状況を広報する一方で、被害を受けた人には自己申告の賠償に応じるとも発表しました。さらに広報担当者は1時間ごとに記者会見して分かるかぎりの情報を提供しました。
事故当初は非難されましたが、それは短期間で終息しました。多田氏はリスク管理の好例として紹介しています。つまり、最初に徹底的に対応する、情報公開することが、結果的に企業のダメージを小さく終わらせるということです。
その真逆をやったのが、アメフト部の2回の事件における日本大学でしょう。最初のボタン(正確な情報開示)を掛け間違えためにバッシングが大きくなりました。挙句にアメフト部が廃部となりました。アメフトファンの私には悲しいことです。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局