COCと独立経営<873>生きた緊急時対応と「時間」 – 関 匤

新年早々、先週用の原稿を書きながら送稿を忘れて紙面に穴を開けてしまいました。油業報知新聞社に迷惑をお掛けしました。
さて、YouTubeで能登地震津波発生時の凄い動画を見ました。

乗用車の車載カメラが記録したものです。海岸に近い集落を走ってきたドライバーが、トコトコあるいている老女性を見つけます。通り過ぎてからバックして、彼女に声をかけて同乗させます。そして高台に向けて走り始めたとたん、車両の後部を水が追いかけてきます。民家の隙間からは道路へ勢いよく海水が飛び出し、あっという間に民家の玄関を突き破って奔流となって車を追いかけてきます。

このドライバーは武勲甲です。女性を同乗させなかったら、彼女は間違いなく水死したでしょう。津波はせせらぎのように現れて、次の瞬間、一気に怒涛に変わることを教えられました。

能登半島のCOC会員は、多忙にも関わらず丁寧に説明した画像を送ってくれました。不幸中の幸いで施設的被害はなく、タンク検査も問題がなかったので早めに営業再開できました。(先週時点の情報です)

車の出入りに支障はないのですが、SS前面の道路と側道が陥没です。近隣民家は倒壊が目立ちます。SSの中には、防火塀が倒れて2台の車が下敷きになって損壊しているところがあります。
施設に問題はありませんが、水道が止まったので雪を溶かして飲料水を作っています。燃料供給は、系列優先にされていますが、独立系ゆえに情報もローリーもあるので調達はできています。

東日本大震災時もそうでしたが、COCのPBは情報と足(ローリー)でタフネスぶりを発揮しました。
この稿で何度か書いていますが、「本気」で緊急時供給なるものの「実効性」を考えるならば、まず、足を持つ流通業者の存在は不可欠です。能登半島のように遠隔地であれば、元売持ち届け物流を待つよりも地場に輸送基地と果断に動ける足がある方が効果的です。

緊急時には「時間」が何より重要であることは、過去の大災害の経験から分かっているはずです。
①現地の情況が伝わる時間
②意思決定の時間
③生存者の時間
④必要な物資が届くまでの時間

食料や医療品・衛生器材などは、自衛隊車両やトラックあるいは乗用車でも届けられますが、石油の場合は、タンクローリーあるいはドラム缶輸送に限定されます。

阪神淡路、東日本、能登と、本当に自然は残酷だと思うのは、酷寒期に襲ってきています。それゆえに「時間」が生存者の被災後の生命を左右します。阪神淡路の時に兵庫県が迅速に伊丹の自衛隊に出動要請しておれば、相当数の生命を救えたはずです。なにしろ「4時間遅れ」の要請でしたから。3日目に新幹線が新大阪まで復旧した時に、私は現地の同僚と知人宅に僅かな物資と義援金を届けに行きました。現地で政府・行政の意思決定の「時間」が犠牲者を増やしたことを実感しました。

石油供給で「本気で」緊急時対応をするのであれば、平時に供給過剰にしておくことです。つまり、
①流通遠隔地に備蓄基地を配備
②販売業者に倉取りさせる
この2点だけで緊急時の「時間」は相当に変わってきます。政府や自治体が情報を掌握する前に、現地に複数の供給拠点とローリーがあれば緊急時対応できます。「時間」に迅速対応し「生命」を1つでも多く救うことが重要です。1台の乗用車が老婦人を迅速に救うこと、これが「生きた緊急時対応」です。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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