年明け前後から「EVに逆風」が世界のトレンドとなっています。ざっとニュースを取り上げてみます。
■米国大手レンタカーのハーツ、電気自動車2万台を売却-ガソリン車に再投資(ブルームバーグ1月11日)
■中国EV市場、2024年も減速見通し-景気低迷と競争激化がメーカー圧迫(ブルームバーグ1月9日)
■欧州のEV市場はハイブリッドに「抜き返された」。2024年も「悪化する」と言える根本原因(三菱UFJリサーチ&コンサルティング土田陽介)
■米テスラ株が下落、独SAPの車両調達打ち切り報道などで(ロイター2月6日)
ハーツは6万台のEVレンタカーを用意していましたが、利用者ニーズとの需給ギャップが激しいこと、つまりEVをレンタルする顧客が少なくて在庫過剰となり、3分の1のEV2万台を売却処分します。すでに12月から売却を始めています。
売却益でガソリン車の品揃えを増やすという内容です。
中国市場のEVは23年に8%増加しているようです。中国のEV販売台数は2018年に99万3000台でしたが、2023年は774万台に大幅増加しています。EUが非難し実態調査を開始するほど巨額の補助金が強力に後押ししています。
しかし変調も見られ、18年にEVの25%だったPHVが23年には34%と構成比を高めています。ガソリン動力への回帰が見られます。
何よりも、補助金を背景に価格のダンピングが激しく、EVは“儲からない車”になっています。記事の中で業界団体の事務局長は、「(販売増加は)激しい競争の中でもたらされ、自動車メーカーの収益性にとって大きな代償となった」と述べています。
EU圏内の新車販売はコロナ禍以降低迷していましたが、23年は14%の増加となりました。そのけん引力となったのがHVでした。全体の4分の1を占めるHVが30%も増加しています。
EVは37%も増えて新車販売シェアの15%に拡大しています。しかし四半期別に見ると伸びが尻すぼみとなっており、全体を押し上げているのはHVの底堅さと記事は述べます。
テスラに関する記事は、従業員の社用車としていたドイツ大手ソフトウェアSAP社がテスラとの取り引き停止を公表したことで、株価が下落したという記事です。
米国はもちろんですが、ゼロエミッションを主導してきた欧州でも、HVの再評価などエンジン車への回帰の動きが見られます。
私は“石油村の政治家さん”と違って、EVに対する為にするような批判をしてはいません。
要は移動体として様々な意味で「便利で快適」かどうかを評価基準としています。EVがそれに適うならEVを選択するでしょう。
移動体の歴史を考えてみると、19世紀の産業革命で蒸気機関車や船舶が発達しました。それまでの風力や人馬力など自然エネルギーではパワーも速力も遅く、そこに強力な火力を持った石炭を利用することで格段の便利さと快適さを得たのです。
有名な画像ですが、20世紀初頭のニューヨーク六番街の光景があります。馬車がラッシュ状態です。しかし、1913年の同じ場所の光景はT型フォードの大渋滞に変わっています。
蒸気機関や内燃機関の爆発的成長を支えたのは、石炭であり石油でした。そして重要な前提条件がありました。石炭も石油も巨大な「余剰物」であったことです。機動力となる部分に余剰が存在することが新技術を発展させて、そこに強大な産業を生み出しました。
EVが意識高い派の世界から、私を始めとする「普通の人」に普及するには、電力や電池の余剰=価格競争が不可欠ではないでしょうか。と記事を読んで考えました。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局