1年前、近隣の元売直営SSにバリケードが張られました。全面改装するのかなと思ったのですが、最近通りがかると工事業者が入って更地にしていました。ロードサイドなのでコンビニ単独店や飲食店など小売店舗になると思います。
元売は一定の収支判断基準を持っていて、燃料油販売量があっても、スパッと閉鎖して更地で不動産売買しています。
一般的に「最後の砦」とか「SS過疎化」と言われるが、元売との温度差が顕在化しています。元売は上場企業であり、最近の配当重視政策にあって投資家の期待に応えるために「座礁資産」を抱え込むよりもキャッシュに変える考えです。ネットワークで物事を考えられるので、閉鎖しても近隣の直営SSが受け皿になります。
元売は元売、小売りは小売りでSS資産に対する考え方は世界が異なっています。さらに小売りは1万7000人の経営者が異なる商圏特性と業態で生きていますから、もっと多彩です。元売が好んで使うフレーズ、「ダイバーシティ」(多様な人材)あるいは「インクルージョン」(多様な人材が相互に機能する)な世界です。(※なんでこんな小難しい言葉を使うのか私には分かりません!)
さて、3月27日付読売新聞にこうあります。
「政府は、4月末が期限となっているガソリン価格を抑制する補助金制度について、延長する方向で調整に入った。岸田首相が近く表明する。中東情勢の悪化による原油相場の上昇などを踏まえたものだ。」
これは“天下の暴論”と言われそうですが、私は「ガソリンの補助金」は無くていいじゃないかと思います。1リットル200円を超えても、使いたい人は使います。
1973年秋の第一次オイルショック時、1リットル64円だったガソリンは、翌1974年4月に99円になっています(総務省統計)。
そして74年の大卒初任給は7万8000円です(厚労省統計)。23年度のそれは21万8000円です。この差は「2.8倍」。単純計算ながら74年のガソリン99円は「277円!」の重みを持ちます。
でも、74年は政府の省エネ政策でガソリンは3%弱の減販ですが、ガソリン車は7%増えています。乗りたい人は乗るのです。
もっと重要なことは、石油製品には「値打ちの違い」があることです。
自由化の時に、なぜ「ガソリン安、中間品高」の価格体系になったのか。それは国際常識として中間品の値打ちが高いという至極まっとうな理由によるものです。
ガソリンはごく一部の特殊需要を除けばガソリン車にしか使えません。一方、中間品ですが有名なヤンマーディーゼルのCMソングで言えば、
「♪農家の機械、漁船のエンジン、ディーゼル発電、ディーゼルポンプ、建設工事もみなヤンマー♪」
と広範囲です。しかもヤンマーが手掛けていない「♪ジェットエンジン、バス、トラック、乗用車♪」ときわめてつぶしの利く製品群です。乗用車ユーザーだけのガソリンと違って、赤ちゃんから老人まであまねく影響するのが中間品(重油も含めて)です。
環境省のHPによると、ガソリン1リットル燃焼で2.3㎏のCO2排出量といいます。補助金延長も結構ですが、「最大多数の最大幸福」を考えれば、ガソリンは高くてもいいじゃないかというのは「天下の暴論」でしょうか。
私は2年前に「標準価格の宿痾」というテーマで何度か拙稿を書きました。
オイルショック時に、バッシングに遭った元売が値上げをできないために、政府がガソリンに思い切り値上げ分を載せて、中間品以下の値上げを抑えた政策です。これが自由化まで維持されて「世界の非常識価格体系」となりました。
ガソリンに上乗せしたのは「嗜好品」というのが理由でした。この日本政府のガソリンに対する見解にならえば、嗜好品に補助金は不要という理屈が成り立つのですが。(COC会員から石つぶてが飛んできそうで背筋を冷たくしています)
COC・中央石油販売事業協同組合事務局