石油業界にとって嫌な、しかし大きなニュースが出ました。「石油終戦」を予感させるものです。インド政府が、2030年以降に同国内で販売する車をすべてEVにするという政策を明らかにしました。ドイツでは連邦議会が、2030年までにガソリン・軽油車の全廃を連邦議会が全会一致で可決しました。ドイツの場合、あくまで議会で法的拘束力はありませんが、政府の政策に影響を与えることは間違いありません。
さらに、最大の自動車市場である中国でも「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた厳しい燃費基準導入を計画しつつあり、世界の大手メーカーは試練にさらされている。昨年九月に公表された当局の提案では、各メーカーに販売台数の八%を来年までにEVないしPHVとするよう義務付けた。この比率は2019年に10%、20年には12%まで高められる。」(ロイター)と報道されています。
世界の二大自動車市場と自動車産業のメッカ・ドイツが、EVに舵を切ったということです。この中で不気味なキーワードが、「2020年」です。
インドは、新車販売台数約360万台ですが、20年にEVとハイブリッド車の登録台数を600万~700万台にする方針です。中国はもっと具体的で、18年に販売する車の8%をEVかPHV(プラグインハイブリッド)とし、19年10%、20年12%と実行目標を自動車メーカーに義務付けています。
トヨタの最大戦略市場である中国で、プリウスが売れなくなります。補助金である「エコカークレジット」が取れなくなるので、一気に競争力を失います。世界のロボット技術の権威で“米国の宝”と呼ばれるギル・ブラッド氏を招いて、豊田章男社長肝いりで「EV開発室」を設置しました。
報道されるように燃料エンジンしか製造してこなかった同社技術陣は大混乱しているようですが、EVをラインアップしないと“世界のトヨタ”が存続しないという危機感の表れです。FCV(燃料電池車)なんて吹っ飛んじゃいますね。先行する日産、三菱はEV技術・車種にさらに磨きをかけるので、米テスラや欧州車も絡んでEV開発・販売競争に突入します。
資源エネルギー庁は2021年までのガソリン内需予測を年率1.7%ずつ漸減としています。これだけでも2015年度比12%減であり、コスモ石油がほぼ吹き飛ぶほどの激減です。
しかし、自動車のEV化に一気に拍車が掛かる情勢です。しかも20年はオリンピック・イヤーが重なります。政府は東京をエコカータウンにするはずです。
この年までに、トヨタはEV車種をラインナップして本格的に販売開始しているでしょう。キャッチフレーズ作りが得意なあの女性知事が在任しておれば、“クール・ビークル”なんで言い出すかもしれません。ガソリン需要は、2004年以降ジワジワと真綿で首を絞めるように縮小してきました。しかし、2020年、ガソリン1..7%どころか、いきなり「17%減」という恐ろしいシナリオが現実味を帯びてきました。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局