COCと独立経営<955>業態革新を阻害する標準仕様SS – 関 匤

「最近、石商の人が市況の話をしなくなったね」という会話が、COC理事会でありました。
全国の石商で「コンプライアンス委員会」が立ち上がっています。法令順守は大切なことですから、実に良いことです。今年は価格談合問題が相次いだので“李下に冠を正さず”のコンプライアンス委員会なのでしょう。

コンプライアンスという言葉はバブル崩壊後に登場して、四半世紀にわたり主に上場企業の評価基準の一つになってきました。
一方、同族経営の中小企業にコンプラがどれほど認識されているか分かりません。オーナー経営者にとって彼に見える世界が「世界」であって、その中心に彼が君臨しているからです。経営者に優れたリーダーシップと先見性、果断な行動力があれば、コンプラ不在でも下は付いてきます。

しかしその逆であれば、SNSの時代ですから世間に発信されてしまいます。自由化から30年間、石油業界の変化をあざ笑うようにITがとんでもなく進化してしまいました。


自由化以前と以降でSS業態に最大の影響を及ぼしたのは、やはりセルフSSの増加でしょう。3月末でセルフ化率は「40.4%」です。ざっくりと平均の2倍のガソリンを販売するとすれば、80%超をセルフSSが販売していることになります。
自由化以前は、中小規模店でもアイランド設計やスタッフの切り回し、そして価格設定や会員制度によって300、400㎘のガソリンを販売するお店がありました。

COCで120坪の敷地でガソリン700㎘、軽油200㎘、灯油450㎘と、とんでもない実績を挙げるSSがありました。しかもオイルを1.5㎘売っていました。負けん気が異常に強い創業経営者がSSに張り付いて陣頭指揮していましたが、このSSの店頭風景には圧倒され、いまだに脳裏に焼き付いています。物理的に不可能を可能にできた時代でした。

一方、セルフSSが登場して増加するほどに、給油アイランドは「自動販売機」となります。
飲料自販機と同じです。高速道路のサービスエリアには大量の自販機が並びます。ターミナル駅、大きな大学、常時催し物が開催される大型イベント会場…つまりお客が集まる「立地」が自販機の売り上げで最大の要因です。だから最近は民家の軒先の自販機を見かけなくなりました。

同じように、ガソリン自販機も立地そして設備が売り上げの最大要因となりました。こと給油数量だけを考えれば、異次元のやる気を持つ経営者であっても、セルフSSが林立する商圏で中小規模で立地の悪いSSでは勝負にならなくなりました。

今さら言うまでもなく、30年前は石油需要が伸びていましたが、ガソリンは2005年から20年間構造的に需要が漸減を続けています。暫定税率撤廃で売価が安くなりますがそれが需要を喚起するか疑問です。
というのも乗用車保有台数は30年間増加しています。ガソリンの減少率で計算すると、日本の乗用車の燃費が30年間で「1.6倍増」となっています。価格安で前年比を少々超えても需要の回復とは言えません。車の燃費は新車への乗り換えでますます高まりますから。


立地と設備で優位なガソリン自販機もこの流れにあって先細りは必至です。
これも今さらですが、SSにガソリン以外の集客軸を作ることは誰もが認識しています。カーケア設備やコンビニで収益を確保するSSもありますが、全体的には模索を続けているのが実情です。

私はSSの業態開発に妨げとなっているのは「元売標準仕様SS」ではないか、と考えています。PBSSもかつては元売マークを掲げていたものが多数あります。給油+軽整備+セールスルームという仕様は、1960年前後に欧米からもたらされたものです。しかし、カーケアも消費環境も大きく変化した現在にあって、標準仕様が事業の制約要因になっていると考えています。給油のついでに何かをするという発想だからです。

COCには自由化時に自動車業界からSS参入された会社がありますが、「クルマのお店にガソリン自販機を付ける」という考え方です。セルフ化でSSは立地も含めてハードの世界になりましたが、経営戦略の方向に沿ったSSハード論があってしかるべきでしょう。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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