COCと独立経営<959>「米国はベネズエラから資源奪還へ」 – 関 匤

令和8年、丙午の年が明けました。
その新年早々に米トランプ政権が、世界に盛大な「お年玉」を落としました。
昨年から米軍によるタンカー拿捕でキナ臭さが漂っていたのですが、米国がベネズエラのマドゥロ大統領の身柄を拘束して、ニューヨーク地裁に麻薬テロなどの容疑で起訴するという事態となりました。
米国の思惑を情報整理してみると、
①米国至近の中米に麻薬生産国がある
②原油で代物弁済する借款でベネズエラに影響力強める中露への牽制
③石油資源の奪還
といえます。


石油に関して、名著「石油の世紀」(ダニエル・ヤーギン)に書かれています。20世紀初頭にシェルが開発し、後にエクソンモービルの前身会社がマラカイボで大油田を掘り当てます。しかし戦後、国有化されてしまいます。
1980年前後から再びメジャーが参入することになり、米国との関係は相当に緩和されました。

私が初めて渡米したのは1988年です。この時、セブンイレブンがガソリンを販売していましたが、セブンの商標に小さく「CITGO」のロゴが表記されていました。
その昔「シティオイル」と呼ばれており、日本では三井物産がオイルの代理店を務めていました。ここをセブンのオーナー会社サウスランド社が買収して製油所を操業していました。
そしてさらに、ベネズエラ国営会社PDVSAと合弁し、サウスランド経営破綻後にCITGOはベネズエラ100%資本となります。その後快進撃で精製能力を拡大し、90年代には全米№1となります。

オクラホマ州タルサの本社周辺に数十カ所のSSを自社ブランドで運営していましたが、それ以外の州ではセブンはじめ独立系流通業者への供給です。訪米時に、この業態は今後日本市場でもアリかなと考えました。
しかしチャベス独裁大統領があからさまな反米姿勢で両国が対立し、CITGOは確か7カ所あった製油所を次々閉鎖して、現在は3カ所まで縮小しています。そして昨年、ベネズエラのデフォルトに伴い、債権者保護を目的に裁判所主導で入札が行われ、アンバーエナジーという企業が約9000億円で落札しています。今年中に買収完了となります。

ベネズエラは抗議しましたが、これはキャッシュを生む同国資産を合法的に買収することで“兵糧攻め”しているように見えます。


トランプ政権に「奪われた資産の奪還」があることは間違いありません。欧米政府企業には歴史上、同じような“報復”が見られます。日本軍が占領した東南アジア、中東で凍結された資産などを奪い返しています。

もう1つベネズエラの資源に関してですが、私は90年頃に某元売で「オリノコタール」の話を聞きました。埋蔵量はサウジアラビアに匹敵するほど巨大です。しかし、「通常の原油と比較して比重が重い上、硫黄分、重金属を多量に含むため、通常の製油所では精製できない」(JOGMEC)。石油連盟の木藤俊一会長も6日に、「(中東産の原油に合わせた)日本の製油所の装置構成からしても使いづらい」(日本経済新聞)と述べています。

一方、米国製油所には分解能力の高いものが少なくありません。バレロ社という90年代から急速に台頭した精製会社があります。
ガス会社から分離した1980年創業の会社です。1984年に初の製油所を操業します。この製油所は「常圧蒸留装置無し」という特異な工場です。精製後の残渣油=重質油を原料としていました。当時、世界で最高の二次装置群を擁しており、サウジから安定調達したタダ同然の残渣油を分解して、ガソリン、軽油など白油を大量生産しました。

この分解力を以て90年台にメジャーや独立系石油会社から製油所を買収し、現在14カ所の製油所を要する全米一の精製会社です。
40年以上前から高度な分解技術を導入している米国精製にとって、オリノコタールの白油化は可能ともいわれます。

「ベネズエラで米国の石油産業がインフラ再建に取り組めば18カ月以内に事業を拡大できる…米企業が負担した費用は米政府が返済すると表明した」(日本経済新聞)とあります。オリノコタールの分解も含めて現状の100万BDを最盛時の300万BD超まで、米国企業の手で引き上げるという「ビジネスマンの思惑」を実感します。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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