vol.742『女性ドライバー蔑視』

『「女性ドライバーの皆様へ質問です。やっぱり、クルマの運転って苦手ですか?」―。そんなメッセージをトヨタ自動車が1日、公式のツイッターで投稿したところ、批判が殺到。トヨタはツイッターの投票機能を使って、「とても苦手」や「すこし苦手」など回答を募っていたのだが、冒頭のメッセージに対し、SNS上では、「“やっぱり”って何 ? 女性蔑視?」、「普通の運転で男女差ってあるのでしょうか」、「免許取得以来無事故無違反の私でも、車の会社からやっぱり運転下手って思われてるのかと思うと悲しい」といった批判的な意見が広がった。これを受けトヨタは同日、「女性の運転技量が男性よりも劣るかのような不適切な表現がございました。多くの方に不快な思いをさせてしまいましたことを、心より深くお詫び申し上げます」との内容を投稿し、謝罪した』─3月1日付「朝日新聞」。

そんなに目くじら立てなくても…とも思うが、女性、イコール、運転が下手と決め付けているように取られてしまったのなら、素直に謝ったほうがよい。まして、トヨタのような大企業は影響力があるので、ジェンダーに関することはもう少し慎重に扱うべきだったかもしれない。しかし、男性と女性では、本当に運転技術に差はないのか。諸説様々で、「ない」という意見もあれば「ある」、それも「女性の方が技術が高い」との意見もある。皆、裏づけとなる統計や臨床データに基づいてもっともらしく説明されている。

セルフスタンドの経営者として長年観察してきた所見を述べれば、セルフ給油に係わる一連の動作について男女の差はほとんどない。ただ、ハムレットの台詞じゃないが“弱きものよ、汝の名は女なり”で、キャップが固くて開けられないと助けを求めてくるのはほとんど女性。仕方ないよね。初めてなので教えてほしいと言ってくるのも女性客が多い。これも、女性ドライバーの方が総じて給油経験が少ないためだろう。私の店の来店客の男女比率なんて調べたこともないし、調べたところでどう役に立てたらよいかも分らないが、日本全体では1億2千6百万人のうち女性が6千5百万人強で、男性より5百万人ほど多い。ただし、自動車運転免許を持っている国民約8千2百万人のうち、女性は45㌫弱である。

話は飛躍するが、1920年代の米国ハリウッド映画界に君臨した大監督 セシル・B・デミルは、ヒット作を生み出す秘訣は「女性客」だと語っている。女性が見たがる映画を作れば、彼女たちは必ず、恋人や夫も映画館に連れてきてくれる、自分の見た映画のことをご近所さんや友たちに宣伝してくれる、という理屈だ。そのため、モノクロ映画の時代にもかかわらず、女優が身に着けるダイヤモンド等の宝石類は全て本物、コートも最高級のミンクを使用するなど、金に糸目をつけず豪華絢爛な大作を製作、大ヒットを連打した。映画に限らず、あらゆる産業において、女性のトレンドをいち早くつかみ、商品化することは成功の必須条件と言われている。GS業界も、これまで女性客を呼び込むために、ハード・ソフト両面で様々な施策を講じてきたが“女ごころと秋の空”とはよく言ったもので、女性客のトレンドは移ろいやすく、なかなか掴めない。あ、これも女性蔑視になるのかな。

女性の運転技術の話からえらく脱線してしまったが、女性は運転が下手という見方が浸透しているのは、やはり、女性の方が安全運転しているからではないか。昨今、ビシバシ取り締まっている煽り運転でも、女性が逮捕されたというニュースは聞いたことがない。安全運転しているから下手と見下すようなマッチョな社会風土が続く限り、これからも女性ドライバーは肩身の狭い気分を味わわされることだろう。締めくくりは、映画「幸せの黄色いハンカチ」の高倉 健の名言で。「おなごっちゅうもんは弱いもんなんじゃ。咲いた花のごと、もろい、壊れやすいもんなんじゃ。男が守ってやらないけん、大事にしてやらないけん」─。これまた女性蔑視か。

 

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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