『茨城県守谷市の常磐自動車道で10日、男性会社員(24)があおり運転を受け、車を停止させられた上、殴られた事件で、傷害容疑で茨城県警から指名手配されていた大阪市東住吉区の男性(43)が18日、大阪市内の自宅マンション近くの駐車場で県警に身柄を確保され、逮捕された。同県警は一緒にいた容疑者の交際相手の女性(51)も犯人隠避容疑で逮捕した』─8月19日付「日刊スポーツ」。
あおり運転、正式名称「車距離保持義務違反」は、一昨年の6月に神奈川県内の高速道路で起きた死傷事件を機に取締りが強化され、昨年の摘発件数は約1万3千件で、前年の約1.8倍に上り、今年上半期も約6800件が摘発されている。一方、罰則はというと3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金にとどまる。今回のケースは傷害罪や暴行罪なども適応されると見られているが、あおり運転に対するさらなる厳罰化を求める声は日増しに強まっているという。
それにしても、なぜあんな愚かで野蛮でことをするのか。仮に、相手の運転に非があるとしても、急停車させたうえ、罵声を浴びせ、殴りつけ、その様子を撮影させるなんて、常軌を逸している。ネット上でも轟々たる批難がとめどなく流れている。容疑者が逮捕されたとはいえ、社会に与えた衝撃と恐怖が拭い去られることはない。
今回、逮捕された連中は別格としても、車を運転している人ならだれでもイライラしたり、むかっとした経験があるはずだ。怒りにまかせたまま運転すれば、だれもが“あおり運転手”になりうる。怒りのコントロールが必要なのだ。1970年代に米国で生まれた感情抑制ノウハウのひとつに「6秒ルール」というものがあるそうな。
人間が怒りを覚えるとき、脳内では興奮物質のアドレナリンが激しく分泌されるのだが、そのピークは、怒りを感じてから6秒後と言われている。つまりその最初の6秒間をやり過ごしてしまえば、その後は徐々に冷静さを取り戻すことができるのだという。運転以外にも、私たちの毎日の営みは怒りを感じることだらけだが、その大半は些細なことだ。とにかくイラッとしたら“1・2・3…”と数え始めることによって、あとで後悔するようなことをせずに済むというわけ。
おかげさまで、セルフスタンドという職場は、「接客」というもっともストレスを感じる要素がほとんどないため、比較的平穏な精神状態でいられるが、お客がちっとも来ないと、イライラが高まってくる。「1・2・3…」と数え始めようものなら、いつまでも数えていなくちゃならない。(苦笑) 辛抱たまらず価格を下げるなんてことをすると、ますます苦しくなるのだから、深呼吸を繰り返し、理性的になるようひたすら言い聞かせるしかない。
ところが、自分は理性的に行動していても、近所の同業者が“あおり値下げ”をしてくることもある。安売り街道を驀進したいならず者には“お先にどうぞ”と道を譲って、マイペースで運転しようと思っていても、ついカッとなって“競争”してしまうというGS経営者は少なくない。恐怖や怒りに駆られて値下げアクセルを踏まないよう自制するのは容易なことではないのだ。だが、猛スピードで走り去った車が、何十㌔か先で警察に捕まっていたり、事故を起こして走行不能になっているのを目の当たりにすると、改めて理性を働かせてよかったと感じたりする。
とにかく、挑発されても冷静であること。まもなく消費増税というキツイ登り坂が始まるというのに、この期に及んでチキンレースのような馬鹿な競争をやって何の得になるものか。さあ、みなさんご一緒に“1・2・3…”。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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