『13日午前5時半ごろ,三重県津市のガソリンスタンドで男が,男性店員(48)をバールのようなもので殴打し,釣銭機から現金約1万円を奪って逃走する強盗致傷事件が発生した。男の年齢と身長は不詳。中肉中背で黒っぽい上下に黒っぽい帽子,黒っぽい手袋を着用していた。釣銭機から現金を奪おうとしたところ,一人で店番をしていた男性に見つかり,バールのようなもので男性の左腕などを複数回殴って逃げた。店員は左前腕を骨折したが,命に別条はない。
津市内では,この事件の前後に,2ヶ所のガソリンスタンドでも,釣銭機からそれぞれ2千円,約24万円の現金が奪われる窃盗事件が発生。いずれも24時間営業のセルフ式の店が狙われ,現場から白い車が逃走しており,県警は同一犯の可能性が高いと見て捜査している』─1月14日付「伊勢新聞」web版。
あとを絶たないGS強盗事件。今回は,津市内の3ヶ所のセルフスタンドを1時間以内に立て続けに襲うという荒業だった。1件目で2千円,2件目で1万円。この際に,従業員に重傷を負わせたものの“アガリ”が少なかったためか,3件目の犯行に及んでいる。負傷した従業員男性には心よりお見舞い申し上げます。
ところで,日本国内のGSでの強盗件数の推移はどんなものかとネットで調べてみたのだが,簡単に分かるかと思いきや,適当な資料が見当たらなかった。警察庁の統計資料は,2014年度のものが最新。どうしてなんだろう。ともかく,それによれば,発生件数は前年比3.6%減の4,043件だった。2000年以降では,2003年の1万1,588件をピークに減少し,約3分の1となり,GSの防犯対策が進んだ様子も伺えるものの,登録GSから単純試算した過去3年間の発生率は12%で,ここ6年間でほぼ横ばいという結果となっている。つまり,GSが減ったから事件件数も減っただけで,発生率はほとんど変わっていないというわけだ。「窃盗」が2,643件で全体の65㌫を占めているが,さらに内訳を見ると,「侵入窃盗」が448件,「非侵入窃盗」が2,114件だった。やはり,屋外精算機を破壊しての犯行が大半であることが分かる。
監視カメラや非常警報装置などの設備は,所詮,犯罪者を牽制することはできても,実際の犯行を阻止するものではない。しかも,近年は,店員を殺傷することもいとわない凶悪な犯行が頻発しているように思える。とにかく,監視室の戸締りは怠らず,賊がやって来て,屋外精算機を壊しはじめても,撃退しようなどとは思わず,安全な場所から警察に通報することが肝要だ。また,かねてから警告していることだが,屋外精算機に何十万円,何百万円もの現金を入れっぱなしにしておかなければならないシステムは,犯罪者の格好のターゲットになってしまうので,やめたほうがいい。
話は脱線するが,インドでは国を挙げて,高額紙幣を廃止し,キャッシュレス社会への脱皮を図ろうとしているとのこと。人口12億を越える大国において,GSやスーパーをはじめ,市民生活における代金決済をクレジットまたはデビットカードにおいて行なうようインフラ整備を進めるという。もしそうなれば,インドのGSやコンビニには現金がほとんど保管されなくなり,賊に襲われることもなくなるかもしれない。
日本において現金で買い物をする習慣を払拭させるのは容易ではないが,犯罪リスクの軽減化を図るうえでも,「一万円札で五百円分給油した客に,つり銭九千五百円を現金で返す」という,やって当たり前のように見えて,実はやらなくても良いサービスは廃止し,カード化を進めるべきだと思う。ただ,クレジットカードでしか給油ができないというシステムは,「コストコ」のように完全会員制でも敷かない限り難しいと思うし,POS通信費や加盟店手数料などの負担がばかにならない。やはり,簡便なプリカ方式が,安全性においても,操作性においても,現時点では一番良いということになる。
セルフスタンドコーディネーター 和田 信治
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