2月10日現在、中国国内における新型コロナウイルスの罹患者は4万人を超え、死者は一千人台に迫っている。中国以外にも27の国と地域で400人近い感染者が報告されており、“見えない恐怖”が世界中に拡がっている。現時点で、終息の見通しはまったく立っておらず、仮にこのままの状態が3ヶ月続くと日本のGDPを1兆円押し下げるという。
今回のウイルス禍により真っ先に打撃を受けたのが観光業界。日本に一年間に訪れる外国人観光客は約3,600万人で、そのうち約1,000万人が中国人とのこと。観光地はどこもガラガラで、ネット上では“いまのうちにのんびり京都観光しようかな”などとつぶやいている人もいるが、実際のところ、旅行なんか行く気分になれない。
とにかく、14億人もの人間が住む国で、自由に移動したり、仕事をしたりできなくなっているわけだから、世界経済に相当な影響が及ぶことぐらいだれでも理解できる。中国はいまや世界第2位の石油消費国であり、第1位の原油輸入国。そんな国がくしゃみどころか咳き込み出した途端、原油至上価格は10㌫余り下落した。当初石油元売は下げ渋っていたが、業転ガソリンはどんどん下がり、一時7~8円もの差が付くに及んで、ようやく値下がりに転じたものの、いまだ4~5円の開きがある。
先週末から愛知県日進市の市況も値下がりが始まり、軒並み130円台に。まあ仕方あるまい。しかし、値下げしたからといってガソリンがたくさん売れる訳でなく、ここは冷静に利益計算をすべきなのだが、相変わらず能天気に♪ね~さげだ 値下げだ 値下げだ 大幅値下げ~(※北島三郎の「まつり」のメロディーで)なんてやり出すんだよな…。人類存亡の危機が始まっているかもしれないという時でも、ガソリンを安売りすることに血道を上げるなんて。(苦笑)
今週後半からはスギ花粉の飛散が本格化するとのこと。マスクは品切れ状態で、どうすりゃいいのと途方に暮れている人が大勢いる。ネット通販では、通常なら数百円から数千円で売られている箱入りマスクが10倍近い価格で売られており、4~5万円するものまである。GS業界にはとても真似できない芸当だ。えげつないと言えばそれまでだが、これこそ需要と供給の論理というものなのだろう。実際、それほどの高値を付けてもまたたくまに売れてしまうんだとか。
恐らく、日本国内でも二次・三次感染がじわじわと、あるいはぶわーと広まっていくことだろう。問題は日本の医療機関が発症者を首尾よく隔離し、治癒できるかどうか。現在、横浜港に停泊中の大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」では、感染者が日に日に増えている。まるでリアル版「船上ホラーナイト」だ。恐怖の坩堝にいる3千7百人もの乗員・乗客をどのようにして救援するか。日本政府の危機管理能力が問われている。
一方、米国を凌ぐ強国を目指して、経済力・軍事力を拡大させてきた中国は、その成長の影で国民の健康・衛生は後進国並みであったことを露呈してしまった。先の香港での民主化デモ、台湾での選挙における独立派の圧勝に続いて、この災難。初動態勢の遅れや情報の隠蔽などに国際社会から非難が浴びせられている。中国という巨大な船が危機に面している。この先、世界の構図が大きく変わるようなことが起きるかもしれない。もはや、予測不能。
『足の速い人がいつも競走に勝つわけでも、強い人が戦いに勝つわけでもない。また、賢い人がいつも食事にありつけるとは限らない。知的な人が裕福になるとも、知識がある人が成功するとも限らない。なぜなら、思いも寄らないことがいつ誰にでも起きるからだ。 人は自分にいつ不幸が生じるかを知らない。まるで、残酷な網に掛かる魚や、わなに掛かる鳥のように、人も、突然起きる災難の時にわなに掛かる』─旧約聖書「伝道の書」 9章。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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