vol.833『心配性』

今年に入ってから原油価格の上昇が続き、ガソリンの仕入れ価格も5~6円値上がりした。だが、愛知県の諸都市では市況はほとんど上がっていない。やはり、緊急事態宣言下にあって販売量が減っているからなのだろう。同業者の方に聞いても、皆一様に「売れないねぇ」とあきらめ顔。「飲食業みたいに一日6万円もらえるなら、喜んで夜8時に閉店するんだけどね」─。

コロナ禍の収束が見えず、当初から過小資本で、経営基盤がぜい弱な小・零細規模の経営環境は厳しさを増している。「東京商工リサーチ」によると、2020年度の負債1000万円未満の企業倒産は、1月までの10ヶ月で529件 (前年同期比24.1㌫増)に達し、前年度の513件を上回った。このペースで推移すると、2000年度以降で最多記録を更新する可能性があるとのこと。

まったく以って気が滅入る。気が滅入るといえば、「コロナうつ」なるものが拡がっており、 2020年の自殺者数は2万919人と、11年ぶりに増加した。そのすべてがコロナのせいではないにせよ、コロナ禍による経済的影響や生活環境の変化、外出自粛や学校の休校などが大きく影響していることは間違いない。痛ましいのは、その中身が女性や若年層の死の増加によるものだということ。女性は男性より2倍程度、うつ病になりやすいというのは世界的傾向である。女性ホルモンとの関連性や社会的格差などが要因とされているが、本当のところは分かっていない。

一方、 国立成育医療研究センターのグループがアンケート調査を行ったところ、小学4年生以上の子どものおよそ15%以上で、うつの症状がみられたなどとする結果をまとめた。苦悩する大人たち、とりわけ親たちの姿を目の当たりにして、ナイーブな子どもたちの心は不安で押しひしがれているのだろうか。「コロナによって家族と一緒に過ごす時間が増えた」とは言うけれど、家庭内暴力も増加している。2020年度のDVの相談件数が4月から11月までの8ヶ月間で13万2355件となり、早くも19年度を1万3000件上回り、過去最多となっている。

ますます以って気が滅入る。何か明るい話題はないか…。ああ、そうだ。日本でもようやくコロナワクチンの接種が始まった、というニュース。いまはまだ、医療従事者への先行接種の段階だが、久々の朗報といえるのではないか。ただ、テレビで注射を打つ様子は、何度見てもエグイ。筋肉注射ということでほぼ垂直にブスリとやられる。思わず「イタッ」と叫びたくなる。しかし、そんなことよりも、やはり副作用の有無が心配だ。一度体内に入れたものは返品が効かない。何ヶ月後、もしかしたら何年後かに障害が出るのではという不安は拭いきれない。ああ、また気分が滅入ってきた…。

「ああなったらどうしよう」「こうなったらどうしよう」と、いろいろネガティブな予想ばかりしていると心身に害が及ぶことは医学的にも証明されている。心配したからといって、状況が良くなったり、解決策が見つかるわけでもない。米国ミシガン大学の研究チームの実地調査では、「心配事の80㌫は起こらない」ということが明らかになっている。さらに、残り20㌫のうち、16㌫は準備をしていれば対応可能なもので、実に心配事の96㌫は「取り越し苦労」に終わるとのことだ。

しかし、それでもなお心配してしまうのが、人間という生きものなのだ。例えば、東日本大震災からもうすぐ十年という時になってまたもや大きな地震が発生した。専門家は、今後まだ十年ぐらいは同程度の「余震」が続くなんて言っている。そんなことを聞かされたあとで、東北地方の人に“あまり心配し過ぎないで”と言うほうが酷な気もする。

心配性の人と聞けば、マイナスなイメージを抱きがちだが、一方で、「慎重である」「計画性がある」「責任感が強い」などの良い特性もたくさんある。むしろ、いまのご時勢、皆が適度に心配性になったほうがいいのかも。要は程度の問題だと思う。心配し過ぎて気が滅入ってしまわないためには、「悪いニュースを見過ぎない」とか、「起床や就寝、食事などの生活リズムを守る」とか、「ほかの人のためにできることを考え実行する」などが効果的らしい。食事としては、脳内物質のひとつであるセロトニンの分泌を促すサバやイワシなど脂の乗った魚をよく食べ、神経を落ち着かせるカテキンを含んでいる緑茶を飲むことが勧められている。逆に、不安障害を引き起こす最も危険なものはアルコールだそうだ。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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