1月14日から再発令されていた愛知県の「緊急事態宣言」は、他の5府県と共に、一週間前倒しして、昨日(2月28日)解除された。とはいえ、油断は禁物ということで、県独自の「厳重警戒宣言」なるものが今月14日まで続けられることになっている。前回、一回目の宣言解除後に、「GoTo」キャンペーンを強行してパンデミックを再燃させ、医療機関が崩壊寸前まで行った失敗を繰り返すまいと、政府・自治体共に引き締めに躍起である。同じ轍を踏んだら、今度こそ東京五輪は飛んでしまうだろうから、まさしく剣が峰に立たされているといっていい。
そこで、当面の生活指導要綱のようなものが、政府分科会から示された。例えば『卒業旅行や謝恩会、歓送迎会は控えて』『花見は宴会なしで』とある。こんな状況でも、まだ宴会やりたいと思う人がどれだけいるのか分からないが、やはり春の陽気に気持ちも緩みがちとなるので、釘を刺しておこうということなのだろう。何だか“欲しがりません勝つまでは”みたいな感じだが、このたびの「敵」は目に見えないウイルス。いかなる和平交渉にも応じることのない無情な相手であり、人類はこの敵と闘い続けるしかない。
働き方については『仕事は組織トップが主導してリモートワークで』と提言されている。「組織トップが主導して」という文言が加えられているところがミソだと思う。職場のリモート化を妨げているのは、多くの場合アナログ思考から脱却できずにいる経営者や管理職だからだ。コロナ禍によって、書類にはんこをつくためだけに出勤するなどという馬鹿げた勤務実態が白日の下にさらされたわけだが、そんな無駄はトップが号令をかければ直ちに無くすことができる。コロナ禍は大変な災厄だが、リモートワークの促進という点におい恩恵をもたらしたといえる。意味なく群れるよりも、意志のある孤立を─。
だが、感染リバウンドを抑える最大の鍵は、やはり会食の仕方だ。宣言解除後も、飲食店の営業時間は1時間延長が許されただけで、引き続き 『席の距離は1~2メートルを目安に確保』とか『会話の声が大きくならないようBGMの音量を最小限に』などの感染対策を徹底するよう求めている。しかし、店側の努力だけでは感染を防ぐことは不可能。やはり、客であるわたしたち一人ひとりがマナーを守ることが何より効果的な対策といえる。
福岡市のカレー店が、対策を講じても一部の客のマナー違反で無意味になる不合理さへの疑問をSNSに投稿、その際「“黙食”にご協力ください」と呼びかけたところ、ツィッターで7万件を越える「いいね」が付くなど大きな反響を呼んでいる。「ルールがあった方が営業しやすい」と追随する飲食店が増えているとのことで、専門家も「客の姿勢が変わらなければ、お気に入りの店をつぶすことになりかねない。政府は時短営業や利用自粛だけでなく、客側の振る舞いについても注意喚起してほしい」(1月27日付「時事通信」)と訴えている。
“同じ釜の飯を食う”という言葉に象徴される日本の会食文化が廃れてしまうと危惧する声もあるようだが、いまはそんなことを言っている場合ではない。感染者数は漸減しているとはいえまだ高止まりの状態だし、変異ウイルスが確実に拡がっている。ワクチン接種が始まったが、感染抑制の明確なエビデンスはまだ得られていない。気を緩めていい理由はどこにもない。
こんな状況の中で飲食店を助けたいと思うなら、味わうことに五感を集中させて食べることに徹するべし。そして、食べ終わったらぐだぐだ喋ってないですぐに店を出る、つまり「短食」を実践すべし。「味気無い」かもしれないが、これが「新しい会食様式」なのだ。でも、これが浸透すれば、後を絶たない役人への過剰接待はなくなるかもしれない。頼み事をしようにも会話ができなきゃどうにもならない。黙々と食事をして、食べ終わったらお開き─そんな会食にひとり7万円もの飲食代を払うメリットなんてないのだから…。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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