『新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言に準じた対策を可能とする「蔓延防止等重点措置」を「蔓防」と省略するのは控えます─。記者会見で連呼して広めたとも指摘される、政府分科会の尾身茂会長は2日の国会審議で「適切ではない」と述べ、今後は使わない考えを示した。行政や報道の関係者、専門家らが2月ごろから、非公式な略称として使いだしたが、大きな体でゆっくりと泳ぐ魚のマンボウを連想させることから、ネット上などで話題となった。尾身氏は2日の衆院厚労委員会で、迅速な対応が必要なのに緩いイメージを連想させるのは不適切だと指摘されるとこれを認め、今後は「重点措置」を使うと表明した』─4月3日付「共同通信」。
確かに“まんぼう効果”はてきめんだったようだ。国民に夜の会食を控えるよう要請している厚労省職員23人が銀座で深夜まで宴会した挙句、3人の感染者を出したのを筆頭に、政府や自治体で“あんたら正気か?”とツッコミたくなるような失態が続いたのはご承知のとおり。あまりの緩さに唖然呆然。マスコミは『自粛生活を求める側が自らの行動を律することができないようでは、国民は政府の呼びかけに従わなくなる』(4月10日付「日経新聞」)と一斉に非難を浴びせたが、こちとら こんな馬鹿共に倣うほど愚かじゃないよ。
ついこのあいだ「緊急事態宣言」が解除されたと思ったら、変異株の拡散と共に大阪や仙台で感染者が激増、5日に大阪・兵庫・宮城で、12日から東京・京都・沖縄で「蔓防」が適用されることとなった。「緊急事態宣言」との違いは、一歩手前の「ステージ3」で発令されること、対象地域が知事の指定した地域に限られること、飲食店への時短要請・命令はできるが休業要請はできない等々あるが、やはりネーミングどおり“緩さ”が感じられなくもない。ちなみに、感染者が増加傾向にある中での要請を“上りまんぼう”、その逆を“下りまんぼう”と言うのだそうだ。鰹みたいだ。いまは“上り”の真っ最中で、またもや緊急事態宣言が発令されるかもしれないとのこと。
今度また宣言を出したとしても、国民が「緊急事態慣れ」していて、効果は限定的だろうとの見方が一般的だが、私は、多くの人々が緊急事態下での生活にまだ慣れていないのだと思う。つまり、いわゆる“新しい生活様式”が身についておらず、春になったら花見に行く、歓送迎会を開く、といった“古い生活様式”がまだ抜け切れないでいるうちに、変異株の増殖を許してしまったのではないか。マスメディアも“どこそこで桜が開花しました”とか“”聖火ランナーが○□県を走っています”なんてニュースを流して、いたずらに人々を煽っていたように思う。いずれにせよ、私たち一人ひとりが“自分は大丈夫”という「慢心を防ぐ」、パーソナルな「まんぼう」を実行すべきだ。
去年の今頃、私たちは一回目の「緊急事態宣言」のただ中にあり、GS業界も多くの店舗で販売量が激減した。人々は“大変だけど、これを耐え抜けば危機を乗り越えられる”と信じていたし、かの大統領は「ウイルスは遅くとも4月までに、奇跡のように消えるだろう」なんてホラを吹いていた。あれから一年、私たちはいまだマンボウが悠然と泳ぐ深海の暗闇の中でもがいている。ワクチン接種が始まったことは光明と言えるが、英国に遅れること3ヶ月、G7の中で最遅。すでに第4波に突入し、医療崩壊が始まっていると言われる中で、まさに時間との競争だ。
「まんぼう」は大型連休期間中も実施される予定で、昨年同様、飲食・旅行業界は逆風にさらされる。このまま変異種の拡大が続くと、東京都だけで4兆円の経済損失を被るとのこと。まだまだ倒産・失業が増加するのは必至だ。GS業界も当然厳しい経営状況に置かれることだろう。改めて去年の4~5月の販売実績を見るとそれだけで気分が滅入る。ただ、その間原油価格が大暴落し、長らく経験したことのなかった高マージンを得て、減販分を補って余りある収益を確保できたが、今年はそこまでは期待できそうにない。私の店も、販売量はいまのところ前年を上回る水準をキープしているが、まったく楽観できない。現在、仕入れ価格は小刻みな上下運動を続けているが、ここは ぶれることなく適正価格の維持に努めるべきだ。この際、元売並びに石商におかれては、「慢性価格競争防止措置」、GS業界向け「まんぼう」を発令していただきたいものだ。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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