『東京都は18日に新型コロナウイルス対策本部会議を開き、都内にまん延防止等重点措置が適用される21日以降、飲食店での酒類提供を条件付きで認めることを決めた。対象区域内ではアクリル板設置など国が示した4項目を守る店舗に限って、客は (1) 1グループ2人まで (2)酒類提供は午後7時まで (3)滞在時間が90分以内―の3条件を満たせば、酒類提供を可能にする。午後8時までの営業時間短縮要請は継続する』─6月18日付「毎日新聞」。
このたびの沖縄県を除く9都道府県の緊急事態宣言解除で焦点となったのは“酒”。酒問屋や居酒屋の店主が、テレビのインタヴューで「まだまだ厳しいが、とりあえず酒が出せるようになってよかった」などと語っているのを観ていて思い出したのが、1979年に流行った『日本全国酒飲み音頭』という歌謡曲。♪酒が飲める 酒が飲める 酒が飲めるぞ~♪と連呼するだけのしょーもない歌なのだが、いまの呑んべえたちの心境を歌い上げているように思える。
自粛要請を無視して酒類を提供する店に客が列を成したり、公園や路上で酒盛りをしたりと、ヒトはかくも酒を渇望する生き物なのかと改めて感じたが、キリンホールディングスが行ったアンケート調査では、約3人に1人がコロナ禍でお酒の頻度・量共に増えたと答えたとのことだ。業務用の出荷量が激減する中、個人消費に占める酒類の金額は二桁増となっている。
アサヒビールが4月に販売開始した、上面のふたを全開すると同時にきめ細かい泡が発生し、飲食店のジョッキで飲む樽生ビールのような味わいが楽しめる缶ビール「スーパードライ 生ジョッキ缶ビール」は、わずか2日で生産が追いつかず出荷停止となり、今月15日にようやく数量限定で販売再開となった。今後、各社とも類似商品を販売すると思われる。酒類メーカーは、今後“家飲み需要”の拡大に力を注いでゆくようだ。
ビールといえば、今年2月、エジプトの墓所遺跡から、世界最古とみられる大量生産型のビール醸造所が発掘されたそうな。いまから5千年以上前の古代エジプトでは、ピラミッドなどの建設工事に携わる人々にビールが支給されていたというし、 発見された当時の出勤簿には、仕事を休む理由として「飲酒」という文字が記されているらしい。また「吐くまで酒を飲む貴族の姿」を描いた壁画も見つかっている。人類の創世記から、人は酒を飲み、酔いしれ、快楽を味わってきたのである。
ところで、ステイホームが続く中、アルコール依存症に陥る人が増えているという。さもありなん。例えば終電だから飲むのを切り上げて帰らなくちゃとか、翌朝仕事だからこのあたりでやめとこうといった歯止めが利かず、ついつい飲みすぎてしまう。翌日二日酔いでもリモートワークだからいいや、みたいになってきて、気がついたら依存症になっていたというケースが多いようだ。しかし、一番の事由は、コロナ禍による不安や孤独によって押しひしがれる心の痛みを癒そうとするからだろう。GS業界人もストレスはいや増すばかり。ついつい酒量を上げてしまう方もおられるのではないか。
近年、「ストロング系」といわれるアルコール飲料が売上げを伸ばしているが、甘い味付けで飲みやすいため、かなり早いペースで飲んでしまう。しかし、アルコール分はビールの倍ぐらいある。そして何より安い。350㍉㍑缶だったりすると、同じ量の水よりも安く売られていたりする。それゆえ、ネット上では「貧者の麻薬」などと呼ばれているらしい。
というわけで、コロナに感染しなくても、酒で命を縮めることにならないようくれぐれもお気をつけください。早くも人流の増加が見られ、東京五輪開催を待たずに“第5波”が発生する危険性があると警告する専門家もいる。♪酒が飲める 酒が飲める 酒が飲めるぞ~♪なんてはしゃいでいると、またまた「ふりだし」に戻ってしまう恐れがある。だが、それがわかっていてもやめられないのが酒なのだろう。最後は、落語家・立川談志が酒について語った格言を。
『酒が人間をダメにするんじゃない。人間はもともとダメだということを教えてくれるのが酒なんだよ』─。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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