『新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからぬ中、全国知事会は20日、オンラインでコロナ対策本部の会合を行い、感染力の強いデルタ株に対して緊急事態宣言では効果が見いだせないと指摘、人流抑制の時限的措置として「ロックダウン(都市封鎖)」のような方策の検討を国に要求した。「ロックダウン」の関連ワードがSNSでトレンドとなり、「海外の国々がやってるからやる、みたいな風潮を感じます」、「ロックダウン 補償がないと ノックダウン」など冷ややかな声が次々と上がった』─8月20日付「中日スポーツ」。
日本では特措法に基づいた緊急事態宣言により、各地で外出自粛要請が発出されてきた。罰則規定は設けられておらず、あくまでも要請。法改正を行い、外出に対して罰金を設け、警察が外出者の見回りを行うような徹底したロックダウンについては、「日本においてはなじまない」と菅首相は語っているが、このまま感染拡大が続くようであれば“最後の切り札”として実行されるかもしれない。
先日、千葉県柏市で、コロナに感染し自宅療養していた妊娠8ヶ月の女性が、病床逼迫のため入院できないまま自宅で出産し、新生児が死亡するという痛ましい出来事があった。このニュースはかなりのインパクトがあったようで、首都圏の医療体制が機能不全に陥りつつあることを改めて全国に知らしめることとなった。“こんなことが自分の県で起こったらどうしよう”という恐怖が知事のみなさんをして「ロックダウン」と言わしめたのではなかろうか。
だが、「ロックダウン」と言っても、国によって様々だ。中国のように家から一歩も出られないような状況もあれば、ヨーロッパのように許可証があれば散歩にも買い物にも行けるロックダウンもある。集会や移動の自由が憲法で保障されている日本で、どんな「ロックダウン」をやろうと言うのか。その間の経済的保障はあるのか。その辺が、当の知事さんたちもよく分からないので「ロックダウンのような」とか「ロックダウン的な」といった表現で“逃げ道”を作っている。
これまでにロックダウンを行った国の多くは、ガソリンスタンドをライフラインとして営業許可業種に加えている。ただし原則セルフ給油とのこと。当然と言えば当然のことだが。ただ、基本的に移動制限が課せられているので、販売量の激減は覚悟しておくべきだろう。一方で食料品などの買い出しに自動車が必要な人は多い。また、今後救急車を呼んでもなかなかやって来ないので、怪我や病気の家族を乗せて医療機関に行くことも想定して、燃料タンクは満タンにしておいた方が良い。石油組合は『ロックダウンに備えて満タンに』というポスターの製作準備をしたほうがいんじゃないだろうか。
おりしも、ニュージーランドでは17日、最大都市オークランドで市中感染者が1人確認されたことを受け、事実上のロックダウンに踏み切った。必需品の買い物や運動、医療サービスへのアクセスなど必要不可欠な外出以外は、自宅にとどまる必要がある。公共交通機関ではマスク着用を義務付けられており、スーパーや薬局、病院、GSなどの重要なサービスを除き、ビジネス活動は中止もしくは在宅勤務に限られる。教育機関や公共施設、レストランやカフェ、ジム、映画館などは閉鎖され、ワクチン接種さえも8月19日まで停止されるという。
ニュージーランドは昨年4月に最初のロックダウンを敢行し、段階的な緩和を経て、今年2月に制限を全面撤廃した。今回、2度目のロックダウンに踏み切ったことについて、J・アーダーン首相は「デルタ型は感染力が強く、隣国オーストラリアでは対応の遅れが悲惨な結果をもたらしていることから、迅速かつ厳格な対策が必要だと判断した」と説明し、国民に再び団結して危機を乗り越えるよう協力を求めた。
それにしても、感染者がたったひとり出ただけでロックダウンするとは。危機管理対策の三大原則は「早く・強く・短く」とされるが、ニュージーランドはそれを愚直に実践しているようだ。人口490万人強。四国と山陰地方の人口を併せた程度の、人間より羊のほうが多いと言われる島国だが、ラグビーの強国として知られる。スピードと突破力においては某国の比ではない。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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