『コストコホールセールのガソリン販売がピンチだ。販売するガソリン等の石油製品の仕入れが難しくなっているというのだ。ある業界関係者は「4月以降、コストコが玉(石油製品)を融通してくれないかと、方々に問い合わせをしている」と打ち明ける。
これまでコストコは、いわゆる業者間転売品(業転玉)を安く買いたたき、販売していた。この業転玉の主な供給者が旧東燃だったのだが、旧JXと統合したことで、これまでの業転玉は旧JX側の流通経路で吸収できるようになり、市場に出回る業転玉が激減したのだ。
加えて、元売り各社が燃料商社などの取引先に圧力をかけているという声もある。「元売りは業者に『販売先登録用紙』に販売先を記入させるのだが、最近は正規販売ルート以外を登録させないように厳しく管理している」(別の業界関係者)というのだ』─5月8日付「ダイヤモンド・オンライン」。
特段、センセーショナルな内容ではない。むしろ、これまで散々聞かされた話。ほとんど“オオカミ少年”化していた感があるが、今回は「コストコ」という具体的な事例が取り上げられたことで、若干、信憑性が増した感はある。私のような、「PB」と名乗るのも口幅ったく感じる零細業者はさておき、それぞれの地域で量販店として名を馳せ、文字通り“独自ブランド”を確立している会社は“ウチも兵糧攻めに遭ったらどうしよう”という不安がよぎるかもしれない。
ただ、「ガソリン販売がピンチ」のはずの「コストコ」の価格は相変わらず安い。東海地方には愛知県常滑市と岐阜県羽島市に店舗があるが、いずれもガソリン価格は120円割れ。GW中は買い物客を取り込んで、さぞかし売れたことだろう。もともとガソリンで儲けようという算段ではないのだから、一般のGSがまともに戦って勝てる相手ではない。これ以上カテゴリーキラーの好き勝手にさせる訳にはいかないということでJXTGが玉を絞ったということであれば、まだ既存特約店のことを少しは守ろうとしてくれているということかもしれない。
しかし、「コストコ」に触発されたのか、有料会員制度を設け、「コストコ」顔負けの会員価格で販売しているGSは全国にたくさんある。ご存知、ガソリン価格サイト「gogo.gs」の「ランキング」をクリックしたうえで、「条件指定検索」の「価格区分」で、「会員」にチェックを入れて検索すると“マジかよ”と絶句するような価格が上位を占める。独立系もあるが、系列店の方が多い。いずれにせよ「コストコ」的なものに憧れ、一番安く、一番たくさん売ることにエクスタシーを感じているGS経営者少なくない。
石油元売が、そうした安売り量販店すべてを懲らしめることなどできるはずもない。むしろ、彼らは普通のGSの5~10ヶ所分のガソリンを1ヶ所で捌いてくれる有難い存在なのだ。周辺の系列店の何軒かが潰れたって、彼らから買ってもらったほうがいいというのが本音だろう。今後、各社の製油所が定期修理に入る。業転玉をさらに絞ったところで、元売から、「ウチの系列になりませんか? 安定供給しますよ。これこれの仕入れ条件で…」なんて誘いをかけられる独立系GSもあるだろう。そんなこんなで、量販PB店が元売マークを掲げるようになり、いままで高く仕切られてきた小規模特約・販売店が耐え切れずにPBになるという“入れ替わり現象”のようなことが起きるかも。
とにかく、冒頭の記事どおり「コストコ」が本当に困っているのであれば、ガソリン市場の50㌫を握る元売が現れたことで、早くも業界内に変化が生じていることになる。一方、東京商品取引所では、きょう8日から、ガソリンなどの石油製品のスワップ取引市場がスタートした。業転玉を買えない方々はこちらで儲けたらどうですか、ということのようだが、これもまた、今後のガソリン市場に変化をもたらすことになりそうだ。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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