地震、台風、そしてミサイル…将来への不安が、人々の心を酸のように、じわじわと蝕んでいる。まずは、地震。政府の中央防災会議のワーキンググループが、このほど、地震を予知できることを前提に1979年に策定された「大規模地震対策特別措置法」(大震法)の見直しを提言したという。つまり、これまでは大地震が来そうだと判定した政府が、あらかじめ該当地域住民に避難を促すとしていた防災スキームを、予知は無理ということを前提としたものに転換したほうがいい、ということになったわけだ。これまで、地震予知のためにどれほどの予算が費やされたのか知らないが、科学者が現在の技術力では「地震の予知は不可能」と、事実上の“白旗”を挙げたことにより、政府は新たな地震対策を早急に練り直すことになりそうだ。
次に台風。日本の気象観測技術は世界最高水準らしいのだが、近年、それをあざ笑うかのような破壊力と不規則性を持った台風が、次々と日本列島に襲い掛かっている。台風だけではなく、その活動によって刺激された前線が巨大なモンスターとなり、類例のない大雨をもたらし、大災害を引き起こしている。今年7月に福岡県・朝倉市を襲った豪雨は記憶に新しいが、地元の老舗GSが倒産に追い込まれてしまった。「帝国データバンク」の説明によれば、売上低下で資金繰りに窮していたところに豪雨災害が発生、直接の被害は無かったものの、災害復旧関連や周辺農家、工場などからの注文が急増。手元資金が枯渇し仕入代金の支払いができなくなったとのことだ。掛売販売と現金仕入の狭間で窮地に立たされたのだろうか。金融機関が暫くでも条件付で助けてあげても良かったのではとも思うが、豪雨でも傘を貸してくれないのが銀行ということか。
そしてミサイル。すでに2度にわたり北朝鮮が放ったミサイルが北海道上空を通過し、Jアラートが発動された。2度とも自衛隊は迎撃措置を取らず。最初のミサイルが8月29日に通過した際、Jアラートのメッセージが「頑丈な建物や地下」への避難を呼びかけたことに対し、屋内にいたのに“頑丈な建物”を探して屋外に出たり、「頑丈な建物や地下が近くにない。どこに逃げればいいのか」などの声が出たりしていたため、政府は「頑丈な」の文言を省き、「建物の中または地下」への避難呼びかけに改めた。その後、今月15日に2回目のJアラートが発令されたが、住民のほとんどはどうしていいやら分からないまま、通常の生活行動を取っていたとのことだ。やむを得まい。実際のところどうしてよいかわからない。
もし、北朝鮮が核ミサイルを東京に撃ち込んだとしたら、どうなるか―。ロンドンにあるシンクタンク「国際戦略研究所」によれば、「300㌔トンの爆弾なら126平方キロメートルを覆い尽す致死的な熱放射を生み出すことができるだろう。東京のど真ん中に落とされたら数十万人が即座に死亡し、15キロ離れた東京ドームから世田谷にいるすべての人が3度の熱傷を負うだろう」と分析している。そんなことが起きないよう祈るしかないが、とにかくいかなる災害においても、まずは警報に反応し、避難行動を取ることが生死を分かつというのが、専門家のほぼ一致した見解だ。東日本大震災で甚大な被害を被った岩手県・釜石市の海岸には、後世に災害の恐ろしさを伝える石碑が建てられている。そこには、地元の中学生が記した次のようなメッセージが刻まれている。『百回逃げて 百回来なくても 百一回目も必ず逃げて』─。
石油業界では、災害時に必ず生じるGSでの長蛇の列を少しでも緩和させようということで、全石連が今月から「ガソリン満タン&灯油プラス1缶運動」を全国展開中だ。結構なことだと思う。2017年3月末で、日本の自動車は二輪車も含めて約8千百万台。仮にこれらが平均10㍑余分に給油すると、81万㌔㍑。平均的なGS1万5千ヶ所分ほどの備蓄量を持つことになる。全石連は、加盟していない独立系GSにはポスター1枚くれないらしいが、そんな了見の狭いことしないで、手を取り合って大いに啓蒙に努めてほしいと思う。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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