vol.687『レッツゴー オオタニ!』

メジャー20球団が参戦したという大谷翔平選手の入札制度(ポスティングシステム)による大争奪戦は、ロサンゼルス・エンゼルスに凱歌があがった。ヤンキースやドジャースのような金持ち球団に競り勝つことができたのは、大谷選手の“二刀流”を認め、具体的な起用法を確約したことが大きいと言われている。

メジャーでは先発投手は通常5人が中4日でローテーションを回すのだが、エンゼルスは大谷選手を含めて6人でローテを組み、その間に打者として出場できるようにするという。その布石として、なんと通算237勝のベテラン左腕、C・C・サバシア(ヤンキース)の獲得交渉を進めているらしい。

また、野手起用に関しても「投げた翌日は休んで一日置きに出場と休みを繰り返す」とか、「登板の間に1度だけ打者として出場する」などの複数のプランを用意しつつ、外野守備には就かせずに、指名打者か代打で起用する方針であることなどが明らかになっている。

大谷選手は昨年、投手として10勝174奪三振、打者として104安打22本塁打をマークするという離れ業をやってのけ、ファイターズを優勝へと導き、球界の二刀流反対派どもを沈黙させた。でも、さすがの大谷選手も、メジャーに行くことになれば、二刀流のうちどちらかに絞るのではないかと思われていたのだが、よもやメジャー球団のほうから「二刀流で是非」と言ってくるとは…。

もし、大谷選手が、メジャーで同一年度に二桁勝利・二桁本塁打を達成すれば、あの“球聖”ベーブ・ルースが1918年に達成(13勝・11本塁打)して以来、実に百年振りの快挙となる。日本人が米国民のスーパーヒーローと肩を並べるなんてことをやらかしていいのかどうか、ちょっと心配な気もするが、もし達成すれば、金メダル百個獲るよりもスゴイことだと思う。いまからワクワクする。

大谷選手のどこに惹かれるかと言えば、既成概念をぶっ壊そうという気概、それに尽きる。伝統的な教条主義者はどの世界にもいる。しかも、大抵はそういう人物が「長老」とか「大物」などと呼ばれて、その社会や業界を牛耳っている。伝統や原則がすべて悪いというわけではないが、それらに固執しているうちに、時代や情勢から乖離して行き、遂には滅び去ってしまうということが古今東西の歴史で繰り返されてきた。

自分たちが考えもしなかったことをやろうとする者への畏怖、自分たちが出来なかったことをやってしまう者への嫉妬、自分たちが築いてきたものを壊そうとする者への憎悪─こうしたものが人類の進歩や発展を阻んできた。長年、石油業界の常識や慣例にどっぷり漬かっているうちに、思考力が退化してしまい、時代の変化に付いて行けなくなっていないか。「だれもやったことないから無理」とか「反対されるからやめておこう」などと考えて、あきらめてしまうようなことはないだろうか。23歳の若者の活躍にときめきながら、そんなことを考えたりする。

大谷選手が当初の考えどおりに、高校を卒業してすぐにメジャーに挑戦していたら、いまの彼はなかっただろう。やはり、栗山秀樹という名白楽との出会いがあったればこそだ。恐らく球界の大先輩たちから“二刀流なんかやらせて屈指の逸材を台無しにするつもりか”などと散々圧力を掛けられてきたに違いない。そんな中で、見事に大谷選手を育て上げ、送り出した栗山監督にはただただ感服する。

勇気ある者にはさらなる“祝福”が注がれる。大谷を失ったファイターズに、今度は清宮幸太郎がやってくる! 栗山監督は彼をどのように育てるのだろうか。今度もまた、私たちをあっと驚かせるようなことをやってもらいたい。ついでに、今度こそ斎藤佑樹も何とかしてやってほしいものだ。

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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