毎年末になると「今年の十大ニュース」なるものが発表される。ちなみに時事通信社が選んだ「十大ニュース」の1位は国内編が「天皇退位、2019年4月末に」で、海外編が「北朝鮮、核・ミサイル開発加速」だった。
今上天皇が存命中に皇位を継承したいとの意向を表明したことに、国民の大多数は「賛成」。世論の後押しを受けて今年6月に特例法が成立、新元号は来年中に発表される。このことが、国民生活にどんな影響を及ぼすのかまだよくわからないが、政界や財界で老骨に鞭打って権力の座に居座り続ける御仁は“天皇陛下ですら退かれたのにあの爺さんは…”なんて揶揄されそうだ。
一方、朝鮮半島での有事勃発は、もはや時間の問題との見方もある。そうなれば、原油価格は高騰するというのが一般的な見方だが、逆に下落するという見方もある。その理由は、戦時状態になれば中国をはじめとする東アジア地域にタンカーが原油を輸送することができなくなり、その結果原油がダブついてしまうからなのだと。
日本の石油業界におけるもっとも大きな出来事はと言えば、やはり4月に「JXTG」が誕生したことだろう。2020年までに東燃系の三つのマークはすべて「エネオス」に統一されるとのこと。国内シェア50㌫超の元売が誕生したことで、市況は概ね安定基調にある。“暴れ馬”である業転価格に対するコントロールも効いているようだ。業界のトレンドが、「量」ではなく「益」へと移行したことが鮮明になった一年だったように思う。
しかし、いずれ寡占化の弊害が生じてくることだろう。競争のなくなった業界は必ず衰退する。では、ガソリン需要が年々減り続けるこの業界で何を競ったらよいのだろう。やはり「サービス」ではないだろうか。と言っても“接客サービス”や“割引サービス”のようなものではなく、通信端末や人工知能を活用した顧客管理システムのようなものが決め手になるような気がする。
例えば、北海道の新篠津村では、各家庭の灯油タンクのキャップにセンサーがついていて、灯油がどれくらい残っているかを1日に4回測定し、配達元のGSに自動で送るというシステムを導入している。これによって、GSは配達するタイミングや回数、各家庭までの効率的なルートを割り出せるうえ、高齢者家庭の“見守り”にも役立つという。
米国で拡大しているガソリン配達ビジネスについてはこのコラムでも取り上げた。日本の消防法ではいまのところ難しいが、GSの過疎化が叫ばれる中、このまま手を拱いていていいものか。地方レベルで、地元のGS業者と自治体とが知恵を絞ってみてはどうだろうか。あの「宅急便」だって、最初は運輸省の猛反対を受けたのだから…。
「十大ニュース」にもいろいろあって、「我が社の」とか「我が家の」というものもある。十もないから「重大ニュース」という向きもあろう。自分の会社の一年を振り返ってみれば、ただただ需要減を身に染みて実感する一年であった。そんな中、次代への活路を切り拓こうと、目下、ローコストセルフ向けの新しいシステムを開発中である。本当は、今年中にリリースしたかったのだが、予算面や技術面の問題もあって来年に持ち越しとなった。完成したあかつきには、このコラムでご紹介したいと思う。
零細企業の経営者にとっては「我が社」イコール「我が家」みたいなものだが、とりあえず今年も家族全員、大病や大怪我をすることなく過ごすことができた。とはいえ、あすどんな災厄に見舞われるかも分からない世の中だ。皆様のお店やご家庭のうえにも平安がありますように。次回はWeb版は1月9日、新聞版は12日に掲載する予定です。来年もどうぞ宜しくお願いいたします。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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