『米ゼネラルモーターズ(GM)は12日、決められたエリアで人間が運転に関与しない「レベル4」の自動運転車について、2019年までに実用化する準備が整ったと発表した。マニュアル操作するためのハンドルもブレーキペダルもなく、自動運転のライドシェア(相乗り)サービスとして19年に商用化する予定』─1月13日付「日刊工業新聞」。
「決められたエリア」というのがどの範囲にまで及ぶものなのか不明だが、来年、タイムズスクエアを自動運転のタクシーが往来するといった光景が現実となるのだろうか。いまのところ、「ハンドルもブレーキペダルもない」自動車に乗る勇気は、私にはない。人間は判断を誤ったり、疲労を感じたりして運転事故を起こすが、それでも人間の脳が1秒間に処理する情報は、スーパーコンピュター40分間に匹敵する。AIが人間の技能を凌駕するとは信じ難い。
しかし、自動運転車の開発は、深刻な人手不足に苦しむ物流業界にとっては実用化が待ち遠しい技術だろう。米国のコンサルティング会社の試算によれば、日本では2027年にトラック運転手が24万人不足するとのことだ。ネット通販の普及による宅配便の増加などで現在より約2割多い96万人の運転手が必要となるが、高齢化などで運転手は約1割減の72万人となると予測。宅配ボックスの設置やトラックの無人化を進めても人手不足は続くと見られている。
実際、GS業界でも、タンクローリーはあっても運転手がいないため配送できないと断られる事態が今冬生じている。私の店にやってくるタンクローリーの運転手に聞くと、いまは早朝5時から走らせたら、夕方5時には帰宅するようにと言われる、以前は、そこからもう一往復ぐらいして稼ぐことができたんだけれど…とぼやいていた。近年の長距離バス・トラックの重大事故を受けて、「1日の休息期間は継続8時間以上」、「時速90キロ以上出ないようにスピードリミッターの装着」などの労働環境に対するルール強化も輸送力低下につながっているようだ。
さりとて安全が第一。特にタンクローリーの運転手は、危険物を運び、荷降ろしするという神経を使う仕事をしているわけだから、その負担を軽減させるために、とりあえず補助的な役割でもいいから、早期に自動運転機能を導入したほうがいいのかもしれない。でもやはり、いくらコンピュター制御で安全だと言われても、ハンドルから手を、ブレーキから足を離し、走行中の車でほか事をしたりするのは相当勇気がいると思うのだが…。
ところで、自動運転車が走り回るような時代が来ると、消滅または激減する仕事が幾つもある。まず、一定のルートを走る路線バスやゴミ収集車の運転手が必要なくなることは容易に想像できる。宅配便もいまのような人手不足は解消されるだろう。それによって存在が脅かされるのはスーパーやコンビニだという人もいる。宅配システムが一段と普及することで、スーパーやコンビニに行く人が激減するからだという。
自動運転とはすなわち、運転免許の必要がなくなることを意味する。よって自動車教習所や免許センターの職員も大幅に削減されるだろう。一方、タクシーの運転手は、自動運転による格安タクシーと、割高でも案内や介助をする人間が運転するタクシーとに二極化するかもしれない。ただし、その場合は運転手に高いサービスレベルが求められる。
さて、ガソリンスタンドはどうだろうか。自動運転車によるライドシェアサービスが普及すれば、それだけで自動車台数は相当減少するだろうから、GSもさらに減ると見られている。自動車のメンテナンスはサービス会社が自前で行なうことになり、油外商品はほとんど不要。給油に来てもドライバーがいないのだから、GSはすべてフルサービス(といっても給油のみ)に逆戻り。ただし“いらっしゃいませ”も“ありがとうございました”も言う必要はない…。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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