先月15日、経営再建中の米国のおもちゃ販売大手「トイザラス」は、プエルトリコと米国内にある735すべての店舗を閉鎖し、事業を清算することを破産裁判所に届け出たと発表した。米「トイザラス」が破綻しても、日本の「トイザらス」は別法人なので、仕入れ、資金繰りその他の企業活動を独自に行っているから、これまで通り営業していくそうだが、日本法人の経営権を握っている持ち株会社は米国法人のものなので、第三者に売却されることになるだろうとのことだ。
“カテゴリーキラー”の代表的存在だったトイザラスの倒産の原因は様々な事由が重なってのことだと思うが、やはりネット通販によって店舗売上が侵食されたことが最大の要因と見られている。ネット通販との競合とはすなわち価格競争である。利便性においては、ネット通販に敵いっこないので、トイザらスは価格以外で消費者に店舗に足を運んでもらえるように、店内に子どもがオモチャで遊べるプレイルームやバースデーパーティーができる場所を設置することで差別化を図ろうとしたが、その設備投資に必要な資金も十分に調達できないまま力尽きてしまったとのことだ。ネット通販の攻勢に対応するのが遅すぎたと指摘されている。
さて、そのネット通販の最大手「アマゾン」が次に目をつけているのが、自動車市場だという。アマゾンジャパンは3月中旬から、自社サイトにおけるカー用品の検索を簡便化する新機能「オートパーツファインダー」(APF)の提供を始めた。現在アマゾンが取り扱っている自動車関連商品は、1、000万点を超える。その中から、自分の車に合った商品を簡単に探し出すことができるよう開発されたのがAPFだ。実際私も使ってみたが、本当に簡単。自分の車をメニュー画面で選べば、あとは適合するタイヤやパーツなどがカテゴリー別に示される。愛想のない店員に苛立たせられることもない。
しかし、せっかくタイヤを買っても自宅で取り付けられる人はほとんどいない。そこでアマゾンでは、購入したパーツの取り付けをサイト上で申し込めるサービスを2011年から始めている。送り先をアマゾンが提携する整備工場に指定でき、購入者は予約当日、車に乗って出かけるだけでいい。提携工場は直近では全国1万4000カ所まで増え、さらに拡充中とのことである。 取り付けまでを含めた事業をこの規模で展開するのは、アマゾンの進出国の中でも日本だけだという。
GSの貴重な収益源だった油外商品も、これでどんどん奪われてゆくことだろう。何せ相手は1年に1個しか売れない商品でも取り揃えており、注文即発送できる。しかも安い。これに対抗するには、負けじと価格を下げるか、ネット通販ではできない付加的なサービスを開発するよりほかない。とはいえ、この人手不足の状況では、365日、きめ細かい対応をすることは不可能だろう。いっそうの事、はじめから勝ち目のない相手と争うのを避け、アマゾンの提携工場の仲間入りをさせてもらうか…。
かつて(もしかしたらいまでも)、“ウチの店は油外収益力があるのでガソリンのマージンがゼロでもやって行ける”と豪語していたGSがあった。当時から“馬鹿なこといってるな~”と思っていたのだが、いまや、油外商品で食ってゆくことは無理だ。だからこそ、ネット通販で購入することのできない数少ない商品であるガソリンで稼がないといけないのだが、相変わらずの価格競争が続いている。
ガソリンの安売りをして客を集めたところで、一体何を売って稼ごうというのか。ネット通販では得られない“わくわく、ドキドキ”とやらが提供できるというのか。“「顧客サービス」から「個客サービス」へ”なんて観念的なことを唱えているあいだに、ネット通販は着々とGS業界の領域にも攻め込んできている。やがて、ガソリンも何らかの仕組みでネットで購入できるようになるかもしれない。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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