COCと独立経営<660>SSシェアとブランド力 – 関 匤

2019年3月末のSS総数は3万0079カ所です。

ブランド別にSS数のシェアを見ると、①JXTG43.1%、②出光11.6%、③昭和シェル9.9%、④コスモ9..3%、⑤キグナス1.5%、⑥太陽1.1%、⑦PB23.5%となります。

JXTGが圧倒的多数を占めています。最近、COCの会員から“面白いよ”と言われて、スマホに「ロケスマ」というアプリをダウンロードしました。飲食、各種小売、サービス施設などが網羅されており、自分の現在位置を示す地図上にプロットされます。地図を拡大するとものすごい勢いでお店のブランドが地図上に降ってきます。

SSを広域に選んでみると、「ENEOS」が絨毯爆撃で降ってきて地図が真っ赤に染まってしまいます。もしも出光昭和シェルが赤いアポロマークに統合したら、ロケスマは目に痛い「視覚公害」になりそうです。

視覚公害という言葉は、その昔、モービル石油の方に教えていただきました。米国のロードサイドにチェーンストアの色彩と奇形オブジェが乱立して、ドライバーの心理にとって“もはや公害に等しい”と問題提起があったそうです。そこでモービルは、SSの基本型を正円と直線だけでデザインしなおして、色も落ち着いたグレーを採用しています。

旧日本石油でも、花札の坊主マークの前のデザインが同じ考え方で作られていました。たしかフランスのデザイナーが日本のロードサイドを眺めて、“悲しいくらいに(色彩が)混乱している!”と叫んだそうです。昔の元売は、かなり消費者心理を考えてデザインしていたようです。(今がそうでないとは言いませんが)

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ところで冒頭のSS数シェアです。これがイコール「ブランド力」であるかどうか疑問です。数の力は、供給量で競う元売にとって意味を持つとは思います。

しかし、消費者にとって有効なブランドであるかどうかは分かりません。マークを知っているとブランド力とは次元が違うはずです。

マクドナルドや吉野家など飲食系の場合、東京で食べようと鹿児島で食べようと、味もサービスも大差なく消費者の期待値の範囲に収まります。

一方で、SSの場合は同じブランドでも用意するサービス・価格・雰囲気は“悲しいくらいに混乱”しています。商流でも特約店があり、サブ店も一般特約店、元売子会社、商社等々と多様です。飲食FCのような契約概念も希薄に思えます。

私が抱く疑問は「石油のブランド力」はあるのかです。最近、米国のマーケティング研究者が書いた「ウソはバレる」(ダイヤモンド社)を読みました。ウェブ情報の進化とともに、20世紀にあったブランド信仰が崩れつつあるそうです。代わりに「絶対価値」へ消費者の選択志向が変化しているとあります。デルやコンパックなど既存ブランドが圧倒的に強かった米国PC市場で、最後発の台湾企業ASUSが飛躍しました。TV宣伝や広告よりも、ウェブの消費者評価が大きな要因となったそうです。使い勝手が良いという「絶対評価」です。

ガソリンの場合、昔と違って品質に差異はありません。セルフ主流の現在、立地・設備・価格+ティッシュで選択されることになります。これはブランド力とは言えません。資本力です。

従って、ハードに恵まれない独立経営者には、質で絶対評価される「ガソリン以外」で勝負して独自ブランドを高めてほしいと考えております。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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