COCと独立経営<682> 「脱・猿の惑星」 – 関 匤

総合商社で石油需給をやっていた方とお話ししました。

1996年の自由化を控えて、数年前から入念に計画を立てて、動き始めてもいたそうです。「次元を超えた未来の世界に夢を抱いて興奮気味に宇宙ロケットに登場した感覚だった」と言います。手持ち原油の委託精製や製品輸入を駆使して、国内新しい石油流通網を形成する未来図を描いていたそうです。

「しかし、辿り着いた未来2019年に着陸したら、そこは“猿の惑星”だった」と実感を込めて語られました。自由化前の人間どころか、進化を逆行してしまって類人猿はびこる世界に退化していたという意味です。

高度化法と元売再編で業転市場が縮小したというよりも、国内流通を円滑にしてきた様々な武器が元売に召し上げられてしまったことを嘆きます。

高齢化と人手不足の中で、内航海運とローリーで元売の支配力が高まりました。そして商社流通拠点であるタンク基地も押さえられて出荷の束縛が強まっています。

タンクには商社の在庫権が(今のところ)認められてはいますが、「わかってますよね」と忖度が働く世界になって、お利口さんにして教室で席に座っている状態だそうです。

ガソリンに関しては、ほぼ完璧に届け先SSまで掌握されています。仕向け先変更など御法度で、コンプライアンスを盾に出荷停止にされかねないとのこと。

こういう「猿の惑星化」のために、先物現物出荷にまで影響が及んでいるそうです。取引所は高度化法で元売再編を誘導した経産省の所管です。商品先物取引という需給調整機能を自ら破壊していることになります。元売は業転を直売と位置付けており、供給責任を担う腹はないそうです。先物市場は現物を伴わず、実際の価格や物流に影響しないバーチャルゲーム化するかもしれません。

総合商社が描いた未来図はあえなく画餅に堕して、現実は、ボスにお尻を差し出して媚を売る高崎山の猿の群れとなりました。経営思想まで昭和時代にタイムスリップしているように思えます。霞が関も業界も、望んで自由経済を放棄して社会主義統制経済に進んでいるように見えます。それほど「戦後配給統制時代」の遺伝子が強いのでしょう。

PBの生き方ですが、1つは猿山のお仲間になる手があります。マークアップです。しかし、元売は系列選別に入っているので簡単にマーク貸与はしないでしょう。なってもサブ店で高い仕切りを戴くことになります。

COCの中で議論しているのは、猿と心中しないように企業やSS店舗に利益軸を構築しようです。猿の世界は売上げを左右する厄介な存在です。生半可な努力では難しい道です。

しかし、トライ&エラーで新しい業態に仕上げている方もいます。COCの中でこういう会社をベンチマークしながら、独自に利益軸の構築を進めてほしいと切望しています。猿山の猿真似ではなく。

COCの2020年度のスローガンを勝手に立ち上げれば、「脱・猿の惑星」です。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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