COCと独立経営<691>小売業者が生み出す次世代SS – 関 匤

石油連盟が2019年暦年の需給統計をまとめています。ガソリンは前年比97.2%となりました。7年連続の前年割れです。

2005年のピーク比では83.2%で総販売量は5000万㌔㍑の大台を割りました。燃料油全体はピークの03年比で67.8%となりました。10数年間で燃料油市場が3分の2に収縮したことになります。

ガソリンは年率1.5%ずつジワジワと、灯油はピーク比半減でなお下落中です。軽油は最近堅調ですが、バブル崩壊で一度半減してからの話です。SS販売油種はさらに減少します。

現在、自動車メーカーがディーラー網の再編成、サブスクモデル、個人リース、シェアリングなどビジネスモデルの転換・開発に取り組むのも、国内市場のピークアウトを見込んでの動きです。「2025年問題」です。

団塊世代の免許返納が増加して、早ければ今年か来年頃に乗用車保有台数が頭を打つというのが、自動車業界の予想です。

また、進行中の自動運転技術の開発と新車への搭載は燃費面でも改善を進化させるでしょう。

燃費改善と軽乗用車の増加で減少してきたガソリンは新たな減販要因に直面します。

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こんな話は、誰でも分かっています。

最近、SS新設や改造が増えてきた感があります。並行してM&Aや運営交代も目立ちます。元売再編以降の市況改善で、「利益があるから伸ばす」と「利益のあるうちに退出」のメリハリが出ているようです。

SSを増やす会社は、当然、「すぐそこにある需要変動」を見込んでの投資の筈です。

元売の次世代戦略図を見ると、SSを起点としたカーライフ、生活サービス、シニア事業などが描かれています。給油機能だけでSSは成り立たないと見ていることが伺えます。

先述のように、私はガソリン需要がジワジワからガクンともう一段落ちる可能性大と見ています。SS数が減って残存者利益を得られるという、これまでの常識が通用するとは思えません。給油設備に対する投資利回りは年々低下していくと思われます。

投資した何百坪かの敷地で、どれだけ集客してどれだけ小売業にふさわしい利益をあげられるかが戦略になる筈です。その利益とは、いくら優秀な経営者でも制御不能なガソリン市況依存ではありえません。だから、元売の次世代戦略図は間違っていません。

ようは戦略図が絵に描いた餅になるか否かです。カーライフ事業の革新は、私でも口にできます。しかし、現実の市場という戦場では本職のディーラー、カーショップ、整備工場や各種専門店が同じ考えで動いています。彼らはガソリンという必需品を持っていない分、「カーライフ命」でやっています。

元売が独自に何かを立ち上げるのか、FC加盟あるいは提携するのか、それとも場所貸しを考えているのか、何を考えているかは分かりません。

ここで連想する時代があります。セルフを視野に入れた規制緩和=自由化の方向性が明らかになった1986年です。「業界は確実に変わる」という共通認識がありました。

旧価格体系でガソリンの利益が分厚かったことと資金豊富なバブル期を背景に、元売も販売業界も独自のSS業態革新に邁進しました。

先鞭を切ったのが共同石油で“SS業態化計画”を打ち出して、コンビニ、ファーストフード、レンタルビデオ…可能な限りの新業態を立ち上げました。横並びの伝統芸で全元売が業態転換に走りました。そして、ことごとくモノになりませんでした。セルフや規模などハード要件に加えて、いつのまにか業態店舗がガソリン増販のアイキャッチ扱いになってしまいました。

では、これからの「次世代戦略」はどのように展開されるのでしょうか。COCの立ち位置で見ていると、SS経営者の頭はすでに相当に多様化しています。元売の垂直統合型モデルを待つのではなく、ほんらいは小売業者が独自に生み出すものが次世代SSと考えています。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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