COCと独立経営<726>車販から始まる下克上 – 関 匤

石油連盟から9月の販売実績が出ました。今年度上期のガソリンは▲12%の大幅減、巣ごもり増販の灯油が+2.5%、軽油は景気の影響で▲8.7%でした。下期の回復もコロナ再拡大の規模次第です。

前回、車販のことを書きました。先日、自動車関連で気になる報道がありました。

1つは、日本電産の永守重信CEOが日経フォーラムで「2030年にEV価格は5分の1になる。普及率は50%に達する」と述べたことです。この発言の真意は、「我が社の力でEVコストを下げて普及させる」ということです。

EVの心臓であり最大のコストが、モーターと電池です。同社はEVモーター生産台数を2025年に年間250万台にするそうです。19年の世界のEV新車販売台数が220万台ですから、日本電産でモーターシェアを独占するという宣言です。

もう1つは、ホンダが今年度中に自動運転レベル3のレジェンドを発売するという発表です。レベル3は高速道など一定の条件下においては、ハンドルやブレーキ操作をシステム任せにできます。実用車の承認は世界初です。

コロナ禍で打撃を受けた世界で経済刺激策として「脱炭素」の大合唱が始まっています。象徴的な存在として自動車があります。数年前に欧州の首脳が一斉に「EV宣言」をしたことがあります。本当なら今頃欧州の新車は100%EVになっているはずですが…。専門家によると、環境対策車であったディーゼル車で検査システムの不正が発覚して、EUの環境戦略が頓挫しました。そのため慌ててEVで環境戦略を取り繕ったのが真相、だそうです。

狼少年のようにEVや脱炭素が叫ばれますが、冒頭のニュースは企業がEVモーター生産に舵を切ったこと、そして自動運転車が公道を走ることになったという「ファクト」です。当然、世界の産業界を激しく刺激します。日本企業2社が戦端を切って、EVと自動運転が加速する可能性が高まっています。

日本のSS業界は有史来、ガソリンの話だけでやってきました。皆さんが口にする「次世代」はこれでいいのでしょうか?

次世代とは、ガソリン客ではなく車(EVを含めた移動体)を囲い込む時代になると考えています。口で言うのは簡単ですが、なかなか出来るものではありません。しかし挑戦し甲斐のある方向性です。

COCのような零細企業集団でも、自動車メーカーの副代理店が私の知る限り4社あります。

2社は自動車業界からSSに参入されていますが、残り2社はSSからゼロベースで車販事業に取り組んできました。20年かけて販売力を高めての副代理店昇格です。

SSはセルフとなり立地・設備のハードで決まる世界です。ヒト・モノ・カネを知恵と努力というソフトの車販事業に傾注した結果です。今後、自動車の環境が激変しても(たぶんそうなるでしょう)、EVや自動運転に対応しながら車販を維持することでしょう。

属人的な部分が大きいので経営者は現場の変化に敏感であることが不可欠です。費用対効果を考えて、業務のテクノロジー導入も必要です。1人の経営者は「対顧客対応」という言葉を口にしますが、自動車は個々の顧客ごとのTPOを考えなければならないという意味です。

元売がカーリースを取扱い、FC系の事業者もあまた存在します。ノウハウを学ぶのは大いに結構ですが、COCの経営者を見ていると自分で作り上げるビジネスであり、中小企業でもそれが可能と感じます。

広く業界を見ても、車販で業績をあげるSS企業はシステム設計から車両調達まで自己完結しています。大げさな言い方になりますが、自動車技術と流通の大変動時代にあって、車という顧客を囲い込む世界から「下剋上」が始まると実感しています。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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