COCと独立経営<763> コロナが加速する特約店不要時代 – 関 匤

最近の民放BS放送は通販番組のオンパレードです。

宝石や衣料通販で画面に購入者数のカウンターが表示される番組があります。数万円の宝飾品で1000人超、数千円の衣料で6000人ほどといったところです。自分なりに原価を推定しながら、放映の諸コスト、税・送料負担を差し引いてけっこうな利益が出ているようです。SSのガソリンと違って在庫負担が重い商品ですから、15分、30分でキャッシュに変わるなら御の字という考え方もあるでしょう。

もっとも、利益が出るからやっているのでしょう。サブスクで生鮮品や料理を毎月届ける通販も増えてきました。飲食店の稼働率が著しく低下しているため、生産者が直接家庭と結びつこうとしています。流通ルートを中抜きできるので魅力的な価格も可能です。

また、ふつうの人には敷居の高い有名料理店のメニューを真空パックで送る番組もあります(どれほど通販番組観ているの?)。店で待っていても客が来ないので、この際、広く味を知ってもらおうというものでしょう。ある種、涙ぐましいものがあります。

通販番組の活況ぶりとは、彼らが「巣ごもり消費」という新しい市場のすそ野を一気に拡大する戦略ではないでしょうか。アマゾンの21年第1四半期売上げは前年同期比44%増、第2四半期は27%増でした。世界がコロナパンデミック突入後、全米で一ドル消費当り50セントがアマゾンだそうです(「小売り未来」プレジデント社)。

ワイドショーでコメンテーターが悲観的なコメントばかり述べている一方で、地に足の着いた商業の世界ではコロナが様々な変化の引き金を引いています。

よく言われるのは、コロナは起こりつつあった変化を顕在化し加速させているということです。とりわけスマホのインフラです。内閣府の直近の保有率調査で単身世帯は76%、2人以上世帯は89%に達しています。70歳以上でも2人以上世帯は74%の普及率です。どこにいても買い物ができるインフラが出来上がっています。

COCのPB店ではスマホ給油を導入するところが増えてきました。店頭注文画面に非接触で給油できるため、予想以上の立ち上がりだそうです。自動車業界は5年以上前から、スマホやナビ操作で給油はもちろんレストランやドライブスルーを事前予約して、ナビで店舗誘導するサービスが登場しています。

石油業界の話になりますが、ENEOSと出光興産が中期経営計画でSSを含めた事業構想図を公表しています。事業データベースのビッグデータをAIが解析して事業間連携のサービス体制を構築するものです。

そこにはもはや「SS」という言葉はありません。ENEOSは「プラットフォーム」であり出光は「スマートよろずや」です。

そこで展開されるサービスですが、カーシェアリング、コインランドリー、宅配ボックス、EV充電などはほぼ無人サービスです。給油も事実上、無人化されています。その他のサービスもFC系ばかりです。わずかに人間の臭いがするのはメンテナンスぐらいです。

AI、IoTによるサービス集積であり、中央のコントロールで統合管理する考え方です。となると、中計構想で必要なくなる存在があります。「特約店」です。構想図のどこに経営者が入り込む余地があるのでしょうか。必要なのは運営者であって、経営者一族ではありません。

いかなテレビ通販やアマゾンでも、「特約店」が挟まれば彼らのビジネスが成立しないのと同じ理屈です。そしてコロナで環境変化は加速しているのです。

各地の石商が「カーボンニュートラル」に異議を表明していますが、それよりも「すぐそこにある危機(特約店不要)」には危惧を覚えないのでしょうか。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局

 


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