COCと独立経営<801>国内精製販売縮小均衡の元売 – 関 匤

出光興産が、西部石油山口製油所の精製廃止を発表しました。2024年中に実施するということです。今年秋にはENEOS和歌山製油所が精製廃止されます。

現在国際精製能力は345万7800BDです。廃止2製油所の合計は24万7500BDです。全体の7.2%が2024年中に削減されます。

石連統計をいじくってみます。2021年度の燃料油生産量に「21年3月末在庫」と「輸入数量」を加えます。そこから「輸出量」を差し引けば、年間の総供給量となります。

① 燃料油生産量 1億4075万

② 前期末在庫    805万

③ 輸入数量    3691万

④ 輸出数量    2394万

⑤ 燃料油販売量 1億5349万

この数字を加減すると、今年の3月末在庫は前年と同レベルの828万とあいなります。

きわめて単純計算ながら、ENEOS和歌山が2023年、出光山口が2024年に閉鎖されると、生産量から「7.2%=1000万超」が削減されます。すると21年度末の期末在庫(推定)を200万下回る“玉不足”となります。

恐らく、両元売は24年時点の国内販売量が2製油所廃止分を上回る減少と読んでいるのでしょう。

2021年度の燃料油販売量は、対前年比101.2%と増販しています。しかし、年度中コロナの影響が無かった2018年度に比べると91.5%に過ぎません。

6月2日付日本経済新聞でENEOS齊藤猛社長のインタビューが掲載されていました。記事はこう述べます。

「ガソリン販売について、齊藤社長は「(減少のスピードが)加速するかもしれない」と悲観的な見方を示した。従来は2040年までに国内需要が半減する可能性を示していたが、原油価格の高騰が続き、半減する時期が早まるとみる。」(日経紙より)

元売首脳の共通の認識として、精製廃止以上の需要縮小を見込んでおり、製油所はまさに「座礁資産」に近づいています。

「問題先送り」という言葉があります。

当時の私はその意味をよく理解していなかったのですが、1990年代後半の米国で凄まじい製油所リストラが進みました。

アジア通貨危機とロシアのデフォルトもあって原油価格が大暴落しました。売上・利益が激減します。これを機に石油メジャーと独立系石油企業の再編が進みます。

この時、メジャーが真っ先にリストラしたのが「国内石油精製・販売」でした。投下資本に対して利益率が低かったからです。米国では製油所がリストラされました。

しかし、国際企業のポートフォリオと違って米国内企業の中には異なった見方をする人がいました。現在もそうですが、人口が増える米国は石油需要が伸びています。90年後半ではもっと勢いがありました。

伸びる市場には挑戦者が出現します。聞いたこともない「テスロ」や「ヴァレロ」という企業がメジャー製油所を買収して、石油供給の世界で台頭しました。しずれも石油化学会社です。ヴァレロは1980年代にサウジからタールのような残渣油(会計上原価はゼロ)を調達して、規模は小さいながら過半数を白油化する分解技術を持ちました。

そしてメジャーが精製を集中選択する間隙をぬって、一気に攻めに入ったようです。系列を持たない稼働率だけを考える戦略に特化したことで、精製空白エリアの石油会社に供給する一方で、非系列でパフォーマンスの高い企業へ供給します。「ハイパーが出ない」と言われた米国市場でウォルマートやコストコの石油売上げが一気に飛躍したのも、分解技術の高い石化業者でした。

今の日本でそういう戦略はありえません。メジャーは原油、国際石化、国際トレーディングのポートフォリオがあって、国内精製販売を一気に合理化できました。もともと国内精製販売の元売は石油で縮小均衡しかない未来に、どういう事業展開するのでしょうか。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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