COCと独立経営<855>「ガソリン補助金出すなら指標の検証を」 – 関 匤

前回の原稿で、大阪茶臼山でEV給電スペース5台分が埋まっていたこと、EV新車販売台数が目に見える数値を示し始めていること、激変緩和措置の終了でガソリン200円が視野に入っていることから、EVの台数がどう動くか注目すべき時にある旨を書きました。
原稿を送った翌日に、某メディアの方から「激変緩和継続するよ」と連絡がありました。そして首相が「検討中」と述べたことで10月以降もガソリン補助金継続となります。

消費財の値上がりにあって、消費者は歓迎することでしょう。SS経営者も高値による買い控えが抑えられ、また毎週補助金額が公表されるので小売価格の上げ下げ幅を容易に設定できるという大きなメリットがあります。

今年1月末に始まった「緩和策」は、原油高騰に対応して拡充が図られて、資源エネルギー庁資料によると最大で41.9円も市況を抑えています。これは明らかに「買い控え抑制効果」となっており、石連統計ベースで今年1~6月の国内ガソリン販売は前年同期比で「100.7%」と僅かながら増販しています。コロナ禍で抑え込まれていた行動緩和の追い風もありますが。

電力も激変緩和補助政策が継続されるようです。最終消費者が送電網を介して電力会社と直結する電力に対して、石油流通は産油国-元売-商社・特約店-SS-消費者までの流通が電力に対して多様性を持っています。このことは、価格の多様性にもつながります。
8月23日のBSテレビ東京「日経ニュースプラス9」に桃山学院大学の小嶌正稔教授が出演されていました。エネルギー経済社会研究所の松尾豪さんと見解を述べておられました。
小嶌教授は、補助金の有無に関わらずガソリンが「200円」に達した場合、消費者の行動が明らかに変わってくるので上値に対する重しとなるのではと述べていました。私が何回か前に述べた2008年の「180円市況」における大幅減販が起こることで価格に歯止めがかかる可能性を指摘されていました。
そして、これまでの補助金の問題点として
①元売に同額の補助金が入ることが卸価格横並びのインセンティブ(動機)につながっていないか
②指標を石油情報センターガソリン小売価格調査よりも為替と原油価格に置くべき-と述べられました。
この辺りの指摘が、先述のように電力や都市ガスのような消費者直結型公益事業との大きな違いです。

補助金の指標としてきた石油情報センターの小売価格調査ですが、私の昔からの実感として実勢よりかなり高めに出ています。SSからのアンケート調査を基にした「現金店頭価格」ということです。しかし、それが補助金額の査定に使われるとなれば、高めに報告する動機が強まる可能性があります。
レシートなどのエビデンスを求めてはいないでしょうから(物理的に不可能ですが)。
ガソリン価格サイトに「gogo.gs」があります。ここは消費者を会員化して投稿にポイントを付与して、SS個別のガソリン価格を収集しています。投稿のかなりの部分はSS事業者が集客のために投稿しているようです。その場合、来店促進というインセンティブが働くので「本当の価格」を投稿します。

石油情報センターとgogo.gsサイトで4円も異なる
石油情報センターとgogo.gsサイトで4円も異なる

グラフは最近1カ月の情報センター調査とgogo.gsの平均価格の推移をまとめたものです。gogoの方が「4円」も安く出ています。全国単純平均で4円というのは大きな差です。ガソリンは地域性が大きく存在します。gogoで全国一安い和歌山県の価格を情報センターと比較すると「8円」も違っています。
小売価格の実態を掴むなら、全てのSSの店頭・会員・クレジット等々の決済構成比を出したうえで加重平均しないと分かりません。gogoにしても補助金の指標価格に置ける価格とは思えません。
延長補助金をやるなら、これまでの支給方法を検証する必要があるでしょう。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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