COCと独立経営<869>新車販売がガソリン需要を下支え? – 関 匤

エネルギーフォーラムという月刊誌があります。
エネルギーといっても石油関連の記事は少なくて、大部分は電力、都市ガス、再エネです。
大手企業の担当役員はじめ官僚・政治家・学識者の見解が中心のハイソな内容で、私には理解できない記事が多い雑誌です。

同誌の12月号で「10兆円の無駄遣い。検証無き価格補助延長の愚策」という特集が組まれています。このタイトル通り、燃料油6兆2000億円、電気・都市ガス3兆7000億円と10兆円規模の補助金投入を行いながら、どのような効果があったか検証がなされないままに補助政策が延長されたことに批判的な内容です。

コメントで石油元売関係者がこう述べています。
「効果が不透明で後の検証がしにくい。それに元売が補助金ありきの経営に慣れてしまえば、ストレステストを受けている他国企業との差は開く一方。業界側から補助金をやめるように声をあげるべきだ」と危惧を述べています。
さらに特集記事は、政府がGX(グリーントランスフォーメーション)戦略を打ち出して、エネルギー業界が構造転換すべき時に逆行する政策と書きます。10兆円をGX戦略の政策に投ずべき時に、「ガソリンは補助金が下支えして消費量が落ちていない」と手厳しいものです。
これが朝日新聞やTBSのようなメディアならともかく、エネルギー業界内部の専門誌がこういう特集を組むのですから、先の元売関係者をはじめ電力・ガス業界でも相当に批判が大きいのでしょう。

政府のGX戦略から、一気にミクロの話になりますが、(HV)を除くBEV(バッテリーEV)の販売が相変わらず伸びています。
暦年で見た場合、1-9月の販売合計で前年1年間の台数を超えています。11月までの合計で4万台を超えて、前年比134%という伸び率です。
一方、乗用車(普通・小型)、軽乗用車も販売が好調です。乗用車は1-11月で前年比120%、軽乗用車は110.6%と伸びが大きく、コロナ前の2019年水準に戻るのは確実です。

分母の低いBEV新車販売が伸びても、乗用車販売全体の分母が拡大しているので、新車販売に占めるBEV構成比は「1.1%」に過ぎません。
政府はHVをEVと見ているので、これが加われば60%を超えてしまいますが。

ところで、エネルギーフォーラムの記事に「ガソリンは補助金が下支えして消費量が落ちていない」とありましたが、案外、新車販売が下支えしているかもしれません。増車による自然増です。
乗用車を月60キロリットル、軽乗用車を40キロリットルとして試算してみると、1-11月の販売増加分で乗用車は月2万5000、軽乗用車は4700、合計3万2000ほどの「ガソリン新規需要」を生み出している計算となります(机上ですが)。
石連統計で1-9月のガソリン販売量が月平均で2万3000増えています。新車による増販量と、当たらずとも遠からずの数字となりました。

BEVの暦年新車販売台数 ―すでに前年を超えている― ※2023年は1ー11月合計 (自販連統計より作成)
BEVの暦年新車販売台数 ―すでに前年を超えている― ※2023年は1ー11月合計
(自販連統計より作成)

SSに関わる者としては、需要の自然増はありがたいと思います。一方、エネルギーフォーラムの特集を読むと、補助金によるガソリン高値抑制策が乗用車購入の心理に影響しているのかとも考えてしまいます。
政治的策動に関与しないCOCとしてはガソリン車であれBEVであれ、移動体が生み出す需要をどうキャッチアップするかを考えるだけです。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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