COCと独立経営<559>現物とスワップの「実在しない前提」-関 匤

商社の業転流通量が減少しているようです。といってPB店が供給に困っているわけではありません。

昨年あたりから、商社は出荷の際に元売に仕向け先を報告しています。それで以て、特定PBへの供給停止、なんてことをやったら商社の再販行為を拘束することであり明らかな独禁法抵触です。(この業界で独禁法が機能しているかどうか分かりませんが)要は、系列店への業転出荷の牽制です。

元売のガソリン輸出がこの数年、急増しています。2012暦年に約90万㌔㍑でしたが、その後右肩上がりとなり、14年270万㌔㍑、15年360万㌔㍑、16年は330万㌔㍑と微減ながら、総需要の6―7%が輸出されています。

資源エネルギー庁や公正取引委員会の資料で3割前後の系列店が業転購入しているとあります。ざっくりとですが、3割のSSが20%業転を買うとガソリン輸出量にほぼ匹敵します。元売のガソリン輸出はシンガポールで利益が取れることに加えて、「系列店業転」を枯渇させる狙いもあると思います。

と納得してもよいのですが、霞が関が出した「証文」と矛盾が生じます。「当該系列特約店が業転玉を取り扱う場合には今後の取引等に影響があると系列特約店に受け取られるような通知を行うことなど…独占禁止法に違反する疑いのある行為は行わないようにすること。」

平成25年9月19日に資源エネ庁石油流通課長と精製備蓄課長連名で、元売社長宛に出された通達文です。いわば系列店業転買いのお墨付きです。

元売再編と並行して不透明と言われた系列仕切価格の透明性を高めることで、系列内価格差や事後調整を無くすという方向性が、石油精製・流通研究会で出されました。

系列価格の明確性とは、取引契約の順守という前提が付く筈です。期間中の仕入れ数量を購入することによって、(満足度は別にして)「明確」が実現します。すると業転購入を阻害させない、先の通達と矛盾が生じます。

その言わば“ガス抜き”として、資源エネ庁は東京商品取引所(TOCOM)にSS業者を誘導しています。ネット取引で現物とスワップ取引が開始されて、各地で説明会が行われています。ガソリン現物は業転なので系列店はできません。となるとペーパー決済のスワップ取引となります。得た利益をガソリン原価に合成して実質仕入れ価格を下げるというテクニックが使えます。スワップとは、自社の仕切りポジションを売ってTOCOM現物取引価格を買うという交換取引きです。買った現物が上がればそれを売って利益を得られます。

ただ、説明資料にストンと腹に落ちない表現があります。「仕切価格=現物平均価格」です。TOCOM現物相場が、系列仕切りとイコールです。指標会社とTOCOMの整合価格が系列の基準価格になるということです。将来はともかく、現時点では実在しない前提です。

TOCOMの現物受け渡し実績は激減しており、シェアの大きな関東地区でも一六年は12年比で半減以下、総需要の1.4%です。小さくなったのは理由があります。小さいが故に相場が動きやすいことに加えて、建玉制限などSS業者に損をさせる仕組みが嫌がられたからです。だからPB業者は先物を忌避して商社との相対取引主体になっています。現時点では指標や先物現物に対して、実取引価格は個店・地域別に相当の温度差があります。

「実在しない前提」でスワップ取引に素人(系列店)を呼び込むのはいかがなものかと思いました。

 COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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