vol.777『2020年明けまして…』

年明け早々、米国がイラン革命防衛隊の精鋭部隊の司令官を無人爆撃機で殺害したというニュースが。司令官はかつてのロンメル元帥や山本五十六提督のような国民的英雄だったそうで、イランは5日後にイラク領内にある米軍施設をミサイルで報復攻撃し、緊張が一気に高まった。ツィッターでは「#WWWIII」、つまり、「第三次世界大戦」というワードが世界各国でトレンドの上位を占めたらしい。

しかし、その後、双方批難し合いながらも、全面衝突には至らず、識者の中には、互いの国民のガス抜きのために互いに合意の上で行なわれた“プロレス的”なショーだったのではないかとの見方もある。世界のイスラム教徒の90㌫は「スンニ派」だが、イランはマイノリティの「シーア派」が大半を占める国。つまり、イランがいるかぎり中東アラブ諸国は一致結束することが出来ず、それはこの地域をコントロールしたい米国にとって都合の良いことなのだ、と。また、イランが脅威となっているからこそ、サウジをはじめとする「スンニ派」の国々が、米国から大量の兵器を購入してくれるのであって、イランが滅びて、中東が平和になっては困るのだ、と─。

まさに“悪魔の論理”だ。国際政治とは、かくも冷徹で邪悪な考えで動いているのかと唖然とさせられる。人類の英知によって世界平和を実現するなんて事は幻想だ。もし、第三次世界大戦によって世界中が焦土と化しても、人類はまた戦争を始めることだろう。かつて、アインシュタインは皮肉をこめてこう警告したという。「第三次世界大戦がどのように行われるかは私にはわからない。だが、第四次世界大戦が起こるとすれば、その時に人類が用いる武器は石とこん棒だろう」─。

1914年に勃発した第一次世界大戦は、セルビア人青年がオーストリア皇太子に向けて放った一発の銃弾によって引き起こされたとされている。今回の軍司令官暗殺も、ひと昔前なら、イランが米国及び同盟国であるサウジアラビアなど近隣諸国に宣戦布告、中国とロシアがこれを支援・派兵し、世界大戦勃発─という悪夢が現実化するところだが、さすがに両国ともこの時代にガチの戦争を始めたらどんな災厄が生じるかわかっているようで、事態は収束に向かいつつあるとメディアは報じている。

ただ、第一次大戦同様、何がきっかけで“火薬庫”に火が付くかわからないのも事実。今回も、報復攻撃の最中にイランの空港を飛び立った民間旅客機をイラン軍が誤射、176人もの犠牲者が出、大半はイラン人だった。イラン国内では指導者への怒りが爆発、反政府デモが活発化している模様だ。中東地域の複雑な対立構造の中で、こうした偶発的な事件が起きると、当事国が意図せず本格的な戦争に巻き込まれていく危険性があることを、多くの専門家が指摘している。それに、何と言っても最大のキーパーソンである米国大統領がああいう人だから、この先を思いつき、何をやらかすか予測不可能。おかげで、「世界終末時計」は、核兵器と気候変動のリスクで「人類滅亡2分前」まで迫っている。

そんなわけで、2020年は恐怖の幕開けとなった。とりわけ石油製品を売ってナンボの我々にとっては、先が思いやられる。いや、もはや業界の先行きなんてことを心配している場合じゃない。オーストラリアでは先月から続く山火事で5億とも10億ともいわれる数の野生動物が死んだそうだ。種の絶滅が一気に加速していると生物学者は警鐘を鳴らしている。中国では原因不明の新型コロナウィルスが発生し、今月下旬の大型連休を前に拡散が懸念されている。フィリピン・ルソン島では火山が噴火、大量の火山灰が放出されているうえ、新たな地殻変動への警戒が高まっている。怖いなぁ…数ヵ月後にはオリンピックどころじゃなくなっているかも。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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