vol.793『第二波』

今月14日に、39県で緊急事態宣言が解除された。感染者数が減少傾向にあるためとの事だが、実際のところは、この辺で少し緩めないと、国民生活、とりわけ経済活動が立ち行かなくなってしまうと判断したのだろう。事実、政府のコロナ対策の諮問委員会に、新たに4人の経済学者が招聘されると報じられた。科学者の言うことだけを聞いていたのでは失業者で溢れかえってしまう、感染拡大防止と経済活動再開の“二兎”を追わないと社会は瓦解する、との危機感が今回の緩和令を発出させたのだと思う。

とはいえ、お客さんがすぐに元どおり戻ってくるわけではない。飲食店について言えば、感染の危険の有無よりも、この先どうなって行くのか先が見えず、とても外食を楽しむ気分になれないという人が多いのではないだろうか。また、テレワーク、オンライン会議、時差出勤などが定着しつつあり、昼どきのオフィス街にかつての賑わいはない。テイクアウトをやりだした店は多いが、ほとんどが“焼け石に水”。観光地はもっと悲惨だ。当分、インバウンドはほぼゼロと見るべきだろうから、少々国内需要が回復したところで、どん底状態から抜け出すのは容易でない。

先週ごろから「緩和」と同時にしきりに耳にするワードが「第二波」。世界中の研究者が口をそろえて「必ず来る。問題はいつ来るか、だ」と指摘している。ちなみに約100年前に世界を席巻した「スペインかぜ」は、1918年の3月に米国と欧州で始まったが、感染性は高かったものの、特に致死性が高かったわけではないという。ところが、北半球の晩秋からフランス、シエラレオネ、米国で同時に始まった第二波は10倍の致死率となり、しかも15~35歳の健康な若年者層においてもっとも多くの死者が出た。結局、1919年のはじめに第三波が発生、一年のあいだに3回の流行が発生した結果、全世界で5千万人とも、一億人ともいわれる人が亡くなった。日本での死者は推計死者数は38万人。スペインかぜはワクチンが開発されて抑え込まれたわけではなく、生き残った人たちが抗体を獲得することになり、それが感染の減少と繋がり自然消滅的に収束した。人類が、インフルエンザウイルスの分離に成功したのは1933年のことであった。

当時といまでは科学技術は相当進んでいるはずだから、もうしばらくすれば、ワクチンが開発され、コロナウイルスを撲滅できるに違いない─。ほとんどの人がそう信じているのだが、科学者たちの口からはあまり楽観的な言葉は出てこず、人類はコロナを敵と見るのではなく、上手に付き合ってゆく道を模索すべきだ、などと提言している。気の緩みを戒めるためにあえて悲観的なメッセージを発信しているのか、本当にコロナウイルスは人類の手には負えないモンスターなのか─。ハーバード大学の研究によれば、2022年まで新型コロナによる自粛が繰り返されるだろうとされており、コロナ終息後、元の生活に戻れると想定するのは非現実的だとしている。いずれにせよ、長期戦を覚悟しなければならないようだ。

今後は、「コロナ時代を生きるコツ」みたいなタイトルの本がベストセラーになりそうだ。極薄で通気性抜群のマスクや、手首に装着できる消毒スプレー、滅菌装置が搭載された冷蔵庫などが開発されてヒット商品になったり、“コロナ特約”みたいなものが付いた保険が売り出されたりするかもしれない。ネット通販の需要はますます増えるだろうし、その波にうまく乗った者が、コロナ時代の勝ち組となるだろう。

GS業界について、希望的観測を述べるなら、全国すべてのGSにセルフ方式が義務付けられるのではないか。自動車に燃料を注油するがために、ソーシャル・デスタンスティングを冒す必要などまったくない。セルフに改造する要件を大幅に緩和し、一定期間・規模で補助金を支給するなどの施策を講じてでも、これを推進すべきだ。極端な意見と思えるかもしれないが、コロナと共存してゆかねばならないのであれば、ほかに道はないのではないか。とにかく、いずれ到来するであろう「第二波」に備えて、企業も個人も、迅速に、柔軟に、大胆に変化してゆく必要がある。

  セルフスタンドコーディネーター 和田信治
(このコラムに関するご意見・ご感想は、FAX 0561-75-5666、またはEメール wadatradingco@mui.biglobe.ne.jp まで)


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206