vol.735『元号』

書類、とりわけ官公庁に提出する書類に日付を記入しようとして“えっーと、今年は「平成」何年だっけ”と戸惑うことを繰り返しているうちに、平成の御世は今年で終わることになった。いわゆる“西暦派”の私は、最近、物事にやたらと冠せられる「平成最後の…」という惹句にいささかうんざりしている。

天皇の権威を重んじる人たちにとっては、元号は国家の礎を成す最重要ワードであり、それゆえに、新元号の発表は、新たな天皇が即位する5月1日に発表し、即改元すべきと主張していた。しかし、政府は、国民生活への混乱をきたさないようにという現実的な問題との狭間で苦慮した結果、4月10日に開かれる天皇在位30年の「お祝いと感謝の集い」の翌11日に公表することを決めた。ところが、今年に入ってそれが4月1日に変更されることになった。そのおもな理由は「Windows」らしい。

マイクロソフト社は毎月1回、第2水曜日に全世界統一でソフトの更新を行なうそうで、4月のそれは10日で、当初の公表日の一日前。そのあとから元号が発表されると、ソフト更新のための作業を、翌月の8日まで待たねばならない。しかし、その時にはもう新天皇が即位している。そんな時にソフトをいじって、万が一不具合が生じようものなら大混乱が生じ“悪夢の元年”となってしまう。そんなこんなで、新元号の発表は4月1日に収まったらしい。神聖な元号の発表スケジュールを米国企業のルールに合わさせられるなんて、日本国を中心に世界が回っていると信じている人たちには到底受け入れられないことなのだろうが、これが“現実世界”というものなのだ。ちなみに、いまだに「元号」というものを用いている国は日本だけらしい。

それはさておき、やはり気になるのは、改元による経済効果。「第一生命経済研究所」のレポートによると、ざっとこんなこんな感じ─。

今年のGWは10連休となり、観光・旅行などの需要が増える。とりわけ、新天皇即位の祝慶行事が催される東京に観光客が集まる。また、日本の歴史への関心が高まり、京都・奈良への旅行も増える。新元号のスタートを機に習い事や新しい習慣を始める人が増える。例えば、ダイエット、預金積み立て、ペットを飼うなど。それを当て込んだ消費産業のキャンペーンが活性化する。新天皇・皇后のお人柄が紹介され、楽器演奏、登山、スキー、乗馬、ジョギングなどを始める人が増える。平成が終わるため、様々な分野を平成単位でまとめた書籍やソフトが多数出版される、などなど…。どれも、日本経済を大きく動かすものとはなり得ず、そもそも『西暦が主流の世の中において新元号に対する期待感は小さい』とのこと。

それよりも、今年最大の経済イベントは、10月からの消費税10㌫への引き上げだろう。駆け込み需要と反動減がどれほどの影響をもたらすのか。GS業界にとっても、新元号よりはるかに関心のある問題だろう。また、増税後9ヶ月間、中小小売店でキャッシュレス決済をした場合に5㌫をポイント還元するという消費対策についても、業界全体としての指針が出されるのか否か。また、現金決済のみとなっているGS、もっぱらPBスタンドでは、増税までにキャッシュレスへの対応を取らざるを得ないと考える一方で、一時的なポイント還元に誘われて大枚はたいてPOSシステムをリプレースした挙句、あとになって手数料を引き上げられて苦しめられやしまいかと警戒する向きもある。新たな元号年を迎えて早々に、面倒な、しかし重要な決断をせざるを得ないようだ。

それにしても、今上天皇が先月23日の誕生日会見で声を震わせながら語っていたとおり、明治以降初めて“戦争のない時代”として「平成」が終わろうとしていることは、本当に良かったと思う。新元号には「安」という語が用いられるだろうとネット上でうわさとなっているが、確かに「安らか」な時代が続いてほしいものだ。「安売り」の「安」では困るが…。

 

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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