vol.749『生き残るためには』

『日銀は4月の「金融システムリポート」で、10年後に国内で営業する地方銀行の約6割で、純損益が赤字になるとの試算を公表した。人口減少などを背景に貸出残高の伸びが縮小し、特段の措置を講じない限り収益悪化が止まらないという。日銀は警戒を強め「金融機関間の統合・提携や、他業態との連携も有効な選択肢となり得る」と提言している。企業の借り入れ需要がこれまでと同じペースで減り続けた場合、貸出残高の伸びが鈍化する一方、企業業績の悪化により、貸し倒れに備える信用コストは増加。赤字の地銀は現状の1%から増加傾向となり、10年後には58%に達すると試算した』─4月30日付「共同通信」。

“銀行冬の時代”なんて言われている近年だが、とりわけ、人口減による地方経済の伸び悩みや、日銀のマイナス金利政策の長期化などで逆風が強まっている地方銀行の経営は大変なようだ。上場している地銀80行の昨年3月期の最終利益は合計9800億円で前期比8%減。2年連続の減益で三菱UFJフィナンシャル・グループ1社の利益を下回るのだそうだ。

「地域特性を生かした、地銀ならではのビジネスモデルによる需要開拓を…」なんてことを言うのは容易いが、現実には“地方創生”の掛け声も虚しく縮み続ける地方経済にあって、新たな成長戦略なんて早々簡単に描けるわけもない。個人向けの不動産関連融資に注力する独自戦略で厚い利ざやを稼ぎ“地銀の優等生”と目されてきたスルガ銀行が、シェアハウス向け融資で不正に手を染め巨額赤字に転落したことで、やっぱり地銀が生き残るには相当危ない橋を渡らないといけないんだな、との印象を受けた。

メガバンクの本店が所在する都心などを除けば、地銀は地方経済に血液を送り込む心臓の役割りを担っている。地銀の業績悪化は、地方経済に深刻な影響をもたらす。多くのGS経営者にとっても、対岸の火事の話ではない。だから、地銀さんには頑張ってもらわなくちゃいけないし、そのためにもお役に立ちたいと思っても、減販時代に突入して久しいというのに相変わらず薄利多売神話に縛られているGS業界、地銀さんの目にも将来性はないものと映っているんじゃないだろうか。そればかりか、業績悪化に歯止めが掛からない地銀から資金回収を求められる、つまり貸し剥がされる恐れだってある。“リーマンショックの悪夢よ再び”だ。

地方銀行も、そんなことにならないよう体質強化に向けてもがいている。一番手っ取り早い方法は「経営統合」。政府もこれを促すかのように、独禁法に例外ルールを設けて地銀の統合を柔軟に認める方針を打ち出したが、もうからないもの同士がどれだけくっついてももうからない、という冷ややかな見方もある。確かに。問題は、くっついたあと、スケールメリットを生かした施策をどれだけドラスチックに進められるかどうかで、ただ預金量が増えただけで安心していたら早晩もっと深刻な状況になってしまうだろう。

ここまで書いてきて、GS業界も置かれている状況は銀行とよく似ているなと感じる。石油元売は一足早く再編を進めたが、各地域に展開するGSチェーン店のそれはまったく進んでいない。全国にネットワークを持つ元売100㌫子会社が「メガバンク」とするなら、各地域ごとに数十店舗を展開する特約店(代理店)はさしずめ「地銀」。人口減少と省エネによる需要減の逆風をまともに食らっている。新たなビジネスモデルをと言われたって、車販やレンタカーをやってみたり、コンビニやコインランドリーなどの店舗を併設するぐらいで、構造転換にはほど遠い。セルフ化による人件費の削減も限界がある。そうであれば、たとえば互いにしのぎを削ってきた会社同士が、系列の垣根を越え、さらには系列とPBの隔たりも乗り越えて統合するという思い切った手立てを講じることもあってよいのではないだろうか。“そんなことはあり得ない。たとえボロボロになっても決着するまで噛み合い、突き合い、蹴り合うまでだ”というなら仕方ないが…。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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