新聞報道によると、セブンイレブンが、米石油精製会社マラソン・ペトロリアムのSS部門スピードウェイ買収で独占交渉に入ったそうです。SS併設コンビニエンスストア4000店を220億ドル(2兆4500億円)で買収するものです。
同社は2018年1月に、米国名門石油会社スノコ社から1030店を買収して、全米で9000店を展開しています。
2005年に米国での上場を廃止して以来、日本主導の店舗戦略を徹底しながら店舗網の拡充に転じて、エクソンモービルから相当数のネットワークを買収しています。
90年代後半の原油暴落、その後の原油高騰が続いたことで、欧米メジャーや大手石油会社は精製販売部門を激しくリストラしてきました。その一方で、石化企業が精製で大きな力を持って流通の自由度が高まり、小売りではコンビニや大手流通が圧倒的な力を持つに至りました。
セブンの場合、米国で事業機会が拡大した上に、国内が飽和状態にあるため海外に大きく傾斜しているようです。昨年はインドでの展開を明らかにしています。
日本の小売業で同じような動きが大きくなるような気がします。カーケアではオートバックスがアジアでの店舗を広げています。タイでは石油会社と提携してSS併設店も出店しています。
私が決算資料から試算しましたが、米国セブンは年間2620万㌔㍑のガソリン販売力を持ちます(2018年)。これはJXTGとほぼ同数です。1SS販売量に至っては、セブンは500㌔㍑ですから3倍の違いです。
日本のセブンはJXTGのSS併設で百数十カ所にすぎませんが、米国では9000カ所の500㌔㍑SSを展開するとてつもない小売業者です。「系列店」といった範疇とは異次元の存在です。
一方、米国では「トラベルセンター」というセブンなどコンビニに対する破壊的な規模を持つ業態が成長しています。バッキーズという会社で、テキサスを中心に三六店舗ほどですが、コンビニと言いながら日本の最大規模級のホームセンター並みの規模です。ガソリンはポンプ数百を超えるものが揃います。たぶん3万㌔㍑は売っているでしょう。年間総販売量は出光興産に匹敵します。
米国のダイナミズムに比べて、わが日本はと考えてしまいます。
歴史的に見ると、日本でも業態革新の動きが高まった時代があります。1つは1970年代前半、もう1つは段階的規制緩和が動き出した1980年代中後半です。
最初の時期は最高のタイミングだったと思いますが、オイルショックと規制強化で立ち消えました。2番目は、色んなものが一杯登場して何一つモノになりませんでした。
といっても、SS経営者が無能であったとは思いません。消防の規制もありますが、行政や業界団体がやたらと小姑のように口を出すこと、長年の規制で出来上がった業界構造が数多くの特殊なコスト要因を作ってきました。
経済誌で評価される優秀な経営者でも、SS業界にいたら思うように成長できなかったと思います。というより、とっとと業界を飛び出したことでしょう。
何度も同じことを書きますが、SS業界には「最後の砦」とか「サプライチェーン」とか、本来は資源エネ庁や元売の責務を小売経営者が大声で枕詞にしています。一方で同業者の「成長」の足を引っ張っているように見えます。
同じ枕詞に「7割は1SSの零細業界」があります。半世紀前から叫ばれています。バッキーズがトラベルセンターを立ち上げたのが2001年です。「1SSの零細」でした。ではなぜ、日本の1SS店からバッキーズが出現しなかったのか。それは、枕詞とは裏腹に誰も1SS店の成長を望まなかったからではないでしょうか。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局