不本意ながら明るくない話です。
世界で消費が劇的に低落していますが、米国・サウジ・ロシアは石油価格戦争です。
WTIは瞬間的に20㌦割れしました。公的市場の価格であり、実取引では10㌦台の価格も出ているそうです。米国のシェール企業はコストのかかる掘削なので、損益分岐点は40―50㌦だそうです。10㌦台とは、ほとんど夜逃げ狙いの換金売りです。現実に倒産企業が現れました。
無知を恥じますが、著名なエネルギーアナリスト岩瀬昇氏のコラムによると、需要激減の中で三大産油国の石油戦争は世界の備蓄をオーバーフローさせる可能性があるそうです。
JXTGが19年度最終損益予想を4500億円も下方修正して3000億円の赤字としたのは在庫評価損です。世界中で備蓄を持つ企業は評価損に怯えています。増産しても販売が伴わず、先物暴落となって三大産油国への“逆ねじ”になるという見立てです。
経済産業研究所の藤和彦氏は3月31日、米国情報誌を引用して「シェール企業などが発行している社債のうち5000億㌦分が、今後2週間でディストレスト債(経営破綻に陥った会社の債券)扱いになる」と見込まれていると述べます。50兆円規模ですから破綻すれば連鎖で世界恐慌になりかねません。これはサウジアラムコ、ロシアロスネフチの経営にも跳ね返ってきます。
シンガポール市場のガソリン価格はバレル21㌦ほどです。為替換算すればL15円です。輸入して税金と利益を載せても消費税込み85円レベルです。だから和歌山で102円が出ても不思議ではありません。
その恩恵をCOD(キャッシュオンデリバリー)のPBが享受しています。この瞬間においては、元売再編の系列優位・PB不利のシナリオが逆回転しています。系列非系列格差はL10円開いています。何年か前なら怒涛の安売り競争でしたが、COCのPB経営者は慎重です。需要が激減しているからです。
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石油連盟統計で2月の都道府県販売量が出ました。ガソリンは0.4%の微増ですが、うるう年なので日別換算すると▲3%と減販です。これは最近の減販基調レベルです。
2月はこれで済みましたが、3月はSS実売レベルで20%近い落ち込みになるかもしれません。中旬に少し人手が戻りかけた時に志村けんさんの死去という衝撃が走り、東京都の週末外出自粛要請が出たからです。
法人比率の高いSSには在宅勤務の影響が出ていると思われます。これほど急激に暴落すると、済度取引では資金ショートが懸念されます。
あるCOC会員は、3月下旬から車検を除くカーケア客が激減しています。義務の車検はともかくオイルや洗車など任意で行う作業が閑古鳥だそうです。市況が追いつかないほどの業転急落による給油粗利益拡大で助けられています。
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「ガソリン依存度を下げようと経営してきたが、こういう時期はガソリンの存在はありがたい。ディーラーとかカーケア専門店は厳しいだろう」と言います。いつも3月の車検は買い替えで新車・中古車販売の好機ですが、今年は通検する人が多いそうです。
その自動車市場はかなりひどい状況です。消費増税で足をすくわれていましたが、普通小型乗用・軽乗用の新車、中古車乗用の販売も4―12月では前年比プラマイで微減・微増でした。
しかし、1―3月は10%前後の落ち込みです。年度で数%のマイナスになります。
利益は取れていても、SSは車あってのSSです。新車販売の不振はボデーブローとなって需要に効いてきます。自動車メーカーは団塊世代が後期高齢者に入る2025年に保有台数がピークアウトすると予想していました。そのためにディーラー再編やCASE、Maasに先行投資を行っています。しかし、見えざる脅威によって、ピークアウトが早まる可能性が高まっています。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局